研究課題/領域番号 |
05044187
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
平野 隆雄 順天堂大学, 医学部, 助教授 (10165186)
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研究分担者 |
ZOLTAN Ovary ニューヨーク大学, 医学部, 教授
羅 智靖 順天堂大学, 医学部, 講師 (60230851)
八木田 秀雄 順天堂大学, 医学部, 助教授 (30182306)
奥村 康 順天堂大学, 医学部, 教授 (50009700)
OVARY Zoltan Professor, Division of Immunology
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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キーワード | マスト細胞 / FcεRI / インテグリン / IgE / フィブロネクチン / 活性化 / VLA-4 / VLA-5 |
研究概要 |
インテグリンファミリーに属する多くの接着分子が同定され、白血球上に発現されている分子は、その接着機能により白血球の遊走だけでなく、活性化による機能発現を調節するシグナル伝達分子としても機能していることが明らかになってきた。このような接着分子を介した細胞活性化の解析は主にT細胞を用いてなされ、ヘルパーT細胞におけるサイトカインの産生、あるいはキラーT細胞における脱顆粒反応等への関与が明らかにされている。マスト細胞の高親和性IgE受容体(FcεRI)を介した活性化は、そのシグナル伝達様式や、それによる脱顆粒反応、さらにはTNF、IL-3等のサイトカイン産生が誘導されることなど、T細胞の抗原受容体を介した活性化に類似している点が多く、T細胞の活性化と同様に、マスト細胞の活性化もまた、種々の接着分子を介したシグナルにより調節されていることが予想された。そこで、今回我々は、ラットマスト細胞におけるフィブロネクチン受容体の発現とその機能について検討した。 ラット好塩基球性白血病細胞株(RBL-2H3)及びPMA刺激下におけるラット腹腔マスト細胞(RPMC)は、フィブロネクチン(FN)、ヴィトロネクチン(VN)、及びフィブリノーゲン(FB)に強く結合した。これらのマスト細胞上には、フィブロネクチン受容体として機能するインテグリン分子として、VLA-4,VLA-5,ヴィトロネクチン受容体(VNR)の発現を認めた。 これらのマスト細胞とFNとの結合は、今回新たに作製した抗VLA-α4(MRα4-1)、α5(HMα5-1)、VNR(HMβ3-1)、抗体及びCS-1ペプチド(VLA-4主要結合部位)、RGDペプチド(VLA-5、VNR主要結合部位)の添加により阻害された。 FN、コラーゲン(CL)、BSA、poly-L-lysinをコートしたプレート上でIgEと結合したRBL-2H3細胞を抗IgE抗体より活性化すると、FNをコートしたプレート上では、その他をコートしたプレートに比し著明な脱顆粒の亢進が認められた。この増強効果は、抗インテグリン抗体であるMRα4-1、HMα5-1、HMβ3-1、及びCS-1ペプチド、RGDペプチドの添加により阻害された。この結果から、VLA-4、VLA-5、VNRといったインテグリン分子を介したFNへの結合は、高親和性IgE受容体(FcεRI)を介したマスト細胞の活性化を増強することが明らかになった。同様な機序は、生体内においても、FN等の細胞外マトリックス(ECN)に富む粘膜あるいは組織内に存在するマスト細胞の反応性を高めることに寄与していることが予想され、このことは、マスト細胞のFNへの結合を阻害する抗インテグリン抗体であるMRα4-1、HMα5-1、HMβ3-1の皮下への前投与によりPassive cutaneous anaphy laxis(PCA)反応が著名に抑制されたことから実証された。 この結果からラットマスト細胞上に発現しているFN受容体インテグリンは、in virto及びin vivoどちらかにおいてもマスト細胞の活性化の調節において重要な役割を果していることが示唆された。
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