研究分担者 |
ROBERT Yarch National Cancer Institute, Retroviral Dis, Chief
満屋 裕明 National Cancer Institute, Experimental R, Chief
赤路 健一 京都薬科大学, 薬学部, 助教授 (60142296)
高田 寛治 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (30102106)
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研究概要 |
ヒト免疫不全症ウィルス(HIV)の有するプロテアーゼはウイルス増殖の際に重要な役割を果たしておりこの酵素を阻害することはエイズに対する新しい有効な治療法として有望である.我々は酵素基質遷移状態概念に基づいて,選択性が高く活性の強いHIVプロテアーゼ阻害剤(KNI化合物)を合成することに成功したので抗エイズ薬として開発を進めるため今年度は以下の研究を行った. 1.リ-ドオプチマイゼーションによる最適化合物の決定.KNI化合物のin vitro,in vivo活性のデータを総合的に検討し,キノスタチン(KNI)-272を薬剤学的研究及び臨床試験に用いることに決定した. 2.ラットでの肝消失動態の解析.ラット肝臓で,KNI-272の非結合型肝固有クリアランス値は高いが血中での薬物の結合率が高いため,肝抽出率は中程度であった. 3.KNI化合物のラットでの吸収性に及ぼす製剤的要因に関して検討した.種々の製剤及び投与法について検討した結果,プロピレングリコール+HCO-60液で十二指腸投与時が最も吸収性が高かった. 4.KNI化合物のラット各臓器における代謝.ラットのin vitro代謝実験で,脳,肝臓,腎臓ホモジネート中で,KNI-272濃度はほぼ同程度にまで低下したが,肺ホモジネート中ではKNI-272の濃度に大きな変化は認められなかった. 5.KNI化合物のヒト血漿中での結合は,主な結合蛋白質はα1-酸性糖蛋白質であり,その結合のmodified Scatchard plotが二相性の曲線を示したことから少くとも2種類の結合部位が存在すると推察された. 6.上記2-5の結果,KNI-272の水溶性の低さに起因する有効血中濃度の低さが見られたので,プロドラッグ化を試みた. 7.細胞毒性及び実験動物での毒性の測定と代謝実験の結果より,KNI-272の臨床治験を開始した.
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