低次元および高次元凝縮系における集団的挙動の理論

1993 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 05044201
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 倉本 義夫 東北大学, 理学部, 教授 (70111250)
• 研究分担者: ZITTARTZ J. ケルン大学(ドイツ), 教授 ; WOLFLE P. カールスルー工大学(ドイツ), 教授 ; VOLLHARDT D. アーヘン工科大学(ドイツ), 教授 ; MULLERーHARTM イー. ケルン大学(ドイツ), 教授 ; 福山 秀敏 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10004441) ; 斯波 弘行 東京工業大学, 理学部, 教授 (30028196) ; 川上 則雄 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教授 (10169683) ; FUKUYAMA H. The University of Tokyo ; SHIBA H. Tokyo Institute of Technology
• 研究期間 (年度): 1993
• キーワード: t-Jモデル / 超対称性 / アンダーソン格子 / エッジ状態 / 銅酸化物系 / 超伝導 / 近藤効果 / 長岡問題

研究概要

本研究の分担者は、それぞれ日本とドイツにおいて、現在までに特徴ある理論的研究を展開してきた。本国際学術研究により各分担者は、互いの研究を紹介して議論をすると共に、新しい共同研究を開始することができた。このような系統的協力により、異なった観点からの研究を総合することが可能になりつつある。
本年度の成果としては、実質的に多くの論文として公表されると共に、次年度に向けた継続研究が展開されていることが、挙げられる。ここではそれらを、(1)いくつかの興味ある1次元系に対する厳密解の進展と新モデルの発見、(2)高次元極限における厳密な理論の進展、(3)銅酸化物系のモデルとしての2次元系における動力学の研究、(4)その他の系における集団的挙動の研究、に分類して報告する。
(1)1次元超対称t-J模型の厳密解については、SU(N)の自由度に拡張した系において、単純な励起スペクトルの起源を研究した。Jastrow型波動関数のスピン置換に関する対称性が、自由電子のそれと同じであることに着目すると、複雑な計算をせずに見通しの良い議論ができることがわかった(倉本)。Sutherland modelにおいて、相互作用を特別の形に選ぶと、分数量子ホール系におけるエッジ状態との関連が生ずることが明らかにされた(川上)。しかしこのモデルでは、エッジ状態とは異なり、右向きと左向きの両方の自由度がある。そこで、片方だけの自由度に対応するchiral modelを提案し、その厳密な性質を議論した(川上、倉本)。1次元のアンダーソン格子モデルにおいて、特別なパラメータの場合には、厳密解が求められることを明らかにした(Vollhardt)。さらに、任意次元の連続空間における新しい型の超対称モデルとその厳密解を求めた(倉本、Zittartz)。特に最後の研究の展開においては、国際共同研究による出張が不可欠であった。
(2)高次元極限においては、自己無撞着媒質中の有効不純物問題と等価な形に定式化できる。この極限のハバ-ド・モデルにおける不純物の効果が厳密な手法によって調べられた(Vollhardt)。また数値的繰り込み群の手法を用いて、系の状態密度、帯磁率、比熱等が計算され、金属・絶縁体転移近傍の新しいエネルギー尺度の存在が明らかにされた(倉本)。
(3)2次元のt-J模型をRVB描像に基ずいて研究した。まずslave boson法による平均場近似を用い、超伝導転移温度の上下で動的帯磁率を求めた(福山)。この結果は銅酸化物系における中性子散乱の特徴を再現する。さらに揺らぎの効果を取り入れて、平均場描像をこえた研究を開始している(Woelfle)。
(4)超伝導体中の磁性不純物の挙動について、数値的繰り込み群を用いた結果を総合的に検討した(斯波)。また以前得られた近似解との相互関連について理解を深めた(斯波、Mueller-Hartmann,Zittartz)。また強磁性の発生を厳密に議論するために、ハバ-ド・モデルに少数のホールを注入し、その基底状態が格子構造のどのように依存するかを議論した(Mueller-Hartmann)。

研究成果

• [文献書誌] Y.Kuramoto: "Solvable Supersymmetric Continuum Model in Arbitrary Dimensions" Physical Review Letters. 72. 442-445 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] N.Kawakami: "Critical Behavior of Quantum Models with 1/r^2 Long-Range Interaction" Prog.Theor.Phys.91. 189-218 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] H.Shiba: "Numerical Renormalization Group Study of Kondo Effect in Superconductors" Physica B. 186-188. 239-241 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] T.Tanamoto: "Magnetic Properties of Extended t-J Model I" J.Phys.Soc.Jpn.62. 717-730 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Th.Hanisch: "Ferromagnetism in the Hubbard Model:Instability of the Nagaoka State on the Square Lattice" Ann.Phys.2. 381-397 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] V.Janis: "Construction of analytically Tractable Mean-field Theories for Quan-tum Models.I.General Formalism with Application to the Hubbard Model at Strong Coupling" Z.Phys.B,Condens.Matter. 91. 317-323 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Y.Kuramoto: "Competition between CEF Singlet and Kondo Singlet as Origin of Weak Antiferromagnetism and Resistivity Anomaly" Plenum Press, 10 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] H.Shiba: "Quantum Monte Carlo Methods in Condensed Matter Physics" World Scientific, 11 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] H.Shiba: "Recent Advances in Magnetism of Transition Metal Compounds" World Scientific, 10 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Y.Kuramoto: "Solvable Supersymmetric Continuum Model in Arbitrary Dimensions" Physical Review Letters. 72. 442-445 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] N.Kawakami: "Critical Behavior of Quantum Models with 1/r^2 Long-Range Interaction" Prog.Theor.Phys.91. 189-218 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] H.Shiba: "Numerical Renormalization Group Study of Kondo Effect in Superconductors" Physica B. 186-188. 239-241 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] T.Tanamoto: "Magnetic Properties of Extended t-J Model I" J.Phys.Soc.Jpn.62. 717-730 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Th.Hanisch: "Ferromagnetism in the Hubbard Model : Instability of the Nagaoka State on the Square Lattice" Ann.Phys.2. 381-397 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] V.Janis: "Construction of analytically Tractable Mean-field Theories for Quantum Models. I. General Formalism with Application to the Hubbard Model at Strong Coupling" Z.Phys.B, Condens.Matter. 91. 317-323 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Y.Kuramoto: Plenum Press. Competition between CEF Singlet and Kondo Singlet as Origin of Weak Antiferromagnetism and Resistivity Anomaly, 237-246 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] H.Shiba: World Scientific. Quantum Monte Carlo Methods in Condensed Matter Physics, 193-203 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] H.Shiba: World Scintific. Recent Advances in Magnetism of Transition Metal Compounds, 372-381 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より