研究概要 |
1.グリケーション誘発物質の反応性の比較について:グリケーション誘発物質と考えられる3-デオキシグルコソン(3DG)およびリゾチームとの反応系に正常ラットの血清の低分子画分およびリン酸緩衝液を加えてインキュベートし,リゾチームのアミノ酸残基の損傷と重合度を測定した。その結果,血清の低分子画分に3DGとリゾチームの反応に対する抑制物質の存在が示唆された。 2.グリケーション誘発物質の生成経路について:^<14>C-グルコースをラットに連続的に経口投与し,血清を採血し,低分子画分を除去し,血清タンパク質をHPLCにより^<14>Cの放射能を検出した。その結果,血清タンパク質の一部が^<14>C-グルコースによって修飾されていた。前回,3DGの代謝生成物である^<14>C-3-デオキシフルクトース(3DF)が8日目以降の尿中に検出され,3DGが食餌性グルコースから生成されることを明かとしたが,3DGはグリケーションをうけた血清タンパク質を経由し生成されると推察された。 3.グリケーション誘発物質の同定,起源および分布について:前回の結果を再試した。ラットを3DGの含まない調製試料を与えて飼育した。得られた尿を調製し,GCで分析した結果,前回同様に3DGは検出されなかったが3DFが検出され,GC-MSで同定された。 4.グリケーションの反応機構について:3DGによるタンパク質の修飾構造を明らかにする目的で3DGとα-N-ベンゾイルアルギニンアミドを反応させ,4種の主要反応生成物をR-4-imidazolone,R-4(5H)-imidazolone,R-4(5-hydroxy)-imidazolone,R-4-dihydroxy-2-imidazoline;R=2-(benzoyl-5-pentamide)-amino-5-(2,3,4-trihydroxybutyl)と同定した。 5.グリケーションに対する生体内防御系の解明:3DG代謝酵素の一つであるAldose reductaseをブタ肝臓から精製し,その性質の詳細を明らかにした。また,ニワトリ肝臓から2-oxoaldehyde reductase(2-OR)を精製し,抗体を作成し性質を調べた。その抗体はほかの還元酵素(aldehyde reductase I,IIおよびaldose reductase)との交差反応は示さなかった。2-ORの部分構造を調べたところ,aldose reductaseとaldehyde reductase Iとそれぞれ20-30%の範囲で相同性を有していた。さらに,3DG修飾BSAやグリケーションBSAはCOS細胞に発現させたType I macrophage scavenger receptorによって認識されることが明かとなった。このreceptorに対する3DG修飾BSAの親和性はBSAと3DGの反応時間に伴い増加した。
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