研究課題/領域番号 |
05044215
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中井 彰 京都大学, 胸部疾患研究所, 助手 (60252516)
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研究分担者 |
ELーTHAHER Ta Imperial College, Dept. of Chemistry, Research F
MILLER Andre Imperial College, Dept. of Chemistry, Lecturerer
平芳 一法 京都大学, 胸部疾患研究所, 助手 (80199108)
永田 和宏 京都大学, 胸部疾患研究所, 教授 (50127114)
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研究期間 (年度) |
1993
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キーワード | 熱ショック蛋白質 / ストレス蛋白質 / 細胞内輸送 / コラーゲン / 分子シャペロン / 構造解析 / 分子間結合 / 分子生物学 |
研究概要 |
熱ショック蛋白質hsp47はコラーゲン結合能をもつことを特徴とする。コラーゲンを産生している細胞では必ずhsp47も合成されており、コラーゲンが正常に分泌され、機能するためにはhsp47が分子シャペロンとして働くことが必須であると考えられる。本研究においては、hsp47の機能をより明らかにするために、hsp47の分子構造を明らかにするとともに、hsp47によって認識されるコラーゲン部位を特定することを目的とする。 hsp47は、細胞内の小胞体に存在し、あらたに合成されたプロコラーゲンと一過性に結合してプロコラーゲンが分泌される前に解利する。このように新生ポリペプチドと一過性に結合してそのプロセッシング、成熟を助ける蛋白質を分子シャペロンと呼ぶが、hsp47は基質特異的に働くという特徴をもつ。しかも、コラーゲンとhsp47の結合、解離は生理的な範囲のpHによって調節されている点からもきわめて興味深い蛋白質でありその分子機構の解明が待たれている。 日本側研究者は、hsp47の発現調節、機能の研究では世界的にも中心的な役割を果たしてきた。しかし、蛋白質の分子構造の解析については、これまでに蓄積がなく、従来、X線解析をはじめとする構造解析を中心に研究を進めてきた英国側グループからの共同研究申込によって、立ち遅れていたこの方面の研究が飛躍的に進むことが期待される。分子構造をベースにして、結合解離の分子機構を明らかにすることにより、hsp47の機能をより明確にできるものと期待する。 本年度の共同研究の概要としては以下の通りである。 1)日本側研究者は、hsp47の大腸菌での発現ベクターを作成し英国側に送った。英国側は、その精製の条件を検討しようやく精度の高いリコンビナントhsp47回収できるようになった。 2)英国側は、hsp47の構造についてCDスペクトラムによる解析を開始し、少しずつデータがでつつある。 3)hsp47はセルピンファミリーに属するが、いくつかのセルピンの結晶構造は明らかにされている。これをもとにコンピュータ解析により、hsp47の構造モデルを推定しつつある。 本年度の日本側研究者の研究結果は以下のとうり。 1)hsp47の機能解析 正常なコラーゲンの分泌過程においては、その時間的経過から、合成されたプロコラーゲンは、小胞体内で速やかにHSP47と結合し、HSP47とプロコラー
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ゲンの複合体は、ゴルジ体以後の過程で解離した後、成熟したコラーゲン分子として分泌されることを明らかにした。コラーゲンの成熟に異常をおこすような処理を施した場合、コラーゲンの分泌は阻害され、異常をもつコラーゲンは、小胞体内でHSP47と長時間複合体を形成したままになることをも見いだし、HSP47がまさに分子シャペロンとしての機能を備えていることを明らかにした。 HSP47とコラーゲンの結合は、in vitroではpHによって制御されていること(中性pHで結合し、6.3前後で解離する)を報告してきた。両者の結合に対するpHの影響をin vivoでも解析した。細胞内pHがすべて7付近になるようにした場合にはHSP47とコラーゲン複合体は安定に存在し、逆にpHを6.3前後にした場合には結合しなくなることから、in vivoでもpHが両者の結合と解離に重要な影響を与えていることが明らかになった。 突然変異を導入した遺伝子の実験から、HSP47のコラーゲンに対する結合は、分子全体の立体構造によっていること、また結合の特異性は、むしろコラーゲン側によっていることが明らかになった。 2)肝硬変におけるhsp47の発現 組織化学的な観察では、四塩化炭素投与後2週間で強い炎症とnecrosisが観察されるようになる。一部では肝再生も観察される。4週目には、細胞が脱落したあとを結合織が埋める様になる。週が進むにつれ、繊維化も進行し、8週目位から偽小葉が形成される。10週目では、まだ細胞の脱落が見られ、繊維化も進行中と思われるが、12週目では、完成した肝硬変が形成されている。肝臓の繊維化の形成は、このころから観察されるようになる。Northern blot解析では、I型コラーゲン、HSP47ともに2週目から増加が観察され、以後10週目まで増加が観察された。12週目では、もはやいずれの蛋白質の増加も観察されず定常的な量が合成されるようになった。in situ hybridizationによる観察によると、I型コラーゲン、HSP47ともにコントロール群では、2週目、12週目ともに血管周辺の結合織にわずかに観察される程度である。四塩化炭素投与群では、2週目でnecrosisの周辺細胞(Itoh cellが集積している。)にI型コラーゲン、HSP47がともに観察されるようになる。4週目では、コラーゲンフィブリルの周辺細胞にI型コラーゲンの発現が観察され、同時にHSP47の発現も観察されるようになり、繊維化の進行にともない陽性細胞数が増加する。 隠す
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