研究課題
国際学術研究
一次宇宙線の化学組成、高エネルギーγ線源及び超高エネルギー領域における核相互作用の特性変化等の研究を充分な統計精度をもって確立する為に、インド国立タタ基礎研究所と協力して次の観測装置を建設する事とした。1)大面積、高密度空気シャワーアレイ、2)シャワーセンターに密集した大面積ミューオン検出器、3)高精度到来方向測定器、4)高速度、大容量データ収集装置等である。上記目的達成の為、電磁成分検出器1000台、ミューオン検出器2000m^2による空気シャワー観測装置の建設が計画された。本装置を建設している南インド・タミールナド州ウ-ティにあるタタ研究所電波天文学センターの構内には、本研究計画遂行の為新観測所の建物(実験棟)が平成七年九月全てタタ研究所の予算で完成した。実験装置の建設はインド国内での、コレラ発生やタクシー及び大型車運転手達の長期ストライキもあったが、殆ど当初計画通りに進んで来ている。空気シャワー観測の為のシンチレーション検出器150台は既に観測所周辺に設置を完了し、小サイズ5×10^4以上の現象観測が可能となっている。又、ミュー中間子検出器の建設はコラ-金鉱から約4000本の大型比例計数管が移送され、6m×6mの面積をユニットとする検出器16基、合計564m^2を持つユニークな世界第一級のミューオン検出器が建設中である。現在までに12基が完成し、各々μ-0、μ-1、μ-2と称する事とする。最後の4基(μ-3)については、吸収層のコンクリートブロックを積み上げている。電子回路のテストは済み、全システムの調整を行っている。シンチ系150台及びミューオン検出器μ-0による観測が3月中旬開始され、比例計数管と回路系統の調整が済み次第、順次μ-1、μ-2、μ-3との連動に入る計画である。各検出器μ-0、μ-1、μ-2等の内部の湿度や温度変化は、観測に支障がない事も判明している。これと並行してシミュレーションも行ってきた。トリガー頻度は、一次線のエネルギーしきい値と組成に依存するが、シンチレータ1m^2のもの360台、カバーする面積13500m^2に対し、1TeV以上のエネルギーに対して約4KHzである。データ解析ではバイアス等を考慮して5×10^<12>eV以上を対象とする。一方巨大ミューオン検出器による組成の弁別であるが、シミュレーションの結果では、一次線が鉄、陽子、γ線に対して、親のエネルギーが10^<14>eVの場合、観測されるミューオンの数は各々2000個、900個、及び20個程度となり、明瞭な弁別が可能になる。地下深部で観測されたニュートリノ現象の到来方向の解析結果では、Mkn421の方向から4例が到来しており、偶然誤差は10^<-2>以下である興味ある結果を得ている。この様に本装置の完成によって、一次宇宙線の化学組成と発生機構の物理量が詳細に議論出来る事となる。
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