広域電力の連携には海底直流電力ケーブルの開発が必要である。その開発の問題点のひとつに、直流電圧印加時の絶縁体中の蓄積空間電荷による電界歪みが絶縁破壊を引き起こすことである。その結果、蓄積空間電荷の分布を実際に測定する必要がある。そこで、本研究の目的は次の通りである。 研究の目的 同軸状の架橋ポリエチレン絶縁体中に蓄積される空間電荷分布を測定できるパルス静電気応力法・空間電荷分布測定装置を開発すること。 本年度の研究成果は次の通りである。 (1)同軸形電力ケーブル中の空間電荷分布測定法の開発 同軸形電力ケーブル中の空間電荷分布測定は平板試料と異なり、同軸状の誘電体中のパルス弾性波の伝搬を解析する必要がある。そこで、次の解析と確認実験を実施した。 (1)パルス弾性波伝搬の解析(西安交通大学:朱用昌講師、武蔵工業大学で実施)同軸状誘電体中をパルス弾性波が伝搬するとき、弾性波エネルギーは半径の逆数で減少することを考慮してパルス弾性波の伝搬を解析した。その結果、弾性波の検出圧電素子の信号電圧v(t)は空間電荷分布ρ(r)とパルス印加電界e_p(t)の畳み込み積分で表示できるが、その畳み込み関数に半径の平方根の逆数を乗ずる必要があることが導きだされた。 (2)パルス弾性波の伝搬の実験的確認(武蔵工業大学:田中康寛講師) 前述の信号電圧v(t)が空間電荷分布ρ(r)とパルス印加電界e_p(t)の畳み込み積分で表示できること、および半径の平方根の逆数を乗ずる必要があること実験的に確認を試みた。絶縁試料のポリエチレンは粘弾性材料であるため、パルス弾性波は減衰と分散することが明らかになり、この効果を考慮する必要性が生じた。 (2)誘電体/誘電体界面の空間電荷形成(高麗大学:徐光錫助教授) 電力ケーブルの接続部には必ず誘電体/誘電体界面が存在する。この誘電体/誘電体界面にも空間電荷が形成されることを実験的に発見し、研究を継続している。
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