研究概要 |
1.園芸植物資源 1)ラン科植物の自生地調査と栽培種の入手(.加古舜治,Y.Paisooksantivatana,C.Piluek.7月11日〜7月24日).タイ国の中央部(パ-ヒンガムとフ-ヒンロンクラ国立公園),西北部(タクシンマハラト国立公園),西部(カンチャナブリ),東南部(チャコエンサオ)他,計7カ所を探索し,Coelogyne属3種,Cymbidium属3種,Dendrobium属6種,Doritis属1種,Habenaria属3種,Thunia属1種の分布と植生を調査した.Vanda属4種,Ascocentrum属3種並びにAerides属5種はKasetsart大学と種苗業者所有のものを入手した. 2)日本におけるVanda属の栽培適否の調査(加古舜治,C.Piluek,N.Sinchaisri.10月4日〜10月10日).本調査は1993年より3年間すでに継続し観察調査を行ってきた.その結果,(a)温度光条件は他の一般のランと同じような条件でよく,(b)植込みに用いる鉢にはプラスチックポットの使用が可能で,特にタイの栽培方法である木製バスケットを必要としないと判断された. 3) Neofinetia falcata(フウラン)の自生と発育の調査(加古舜治,C.Piluek.10月4日〜10月10日).フウランは日本産のVandaに近縁な属で,Vandaやそれ以外の属との属間交配が可能で,耐寒性で小形種の育種用によい.本種とタイのVanda類との発育と開花の習性を比較するため栽培調査を行った. その結果,本種は主軸分枝と仮軸分枝の両方の性質を持つこと,年間3枚出葉し,2,3枚枯死すること,開花期は7月〜8月,種子の飛散時期は11月〜12月であること,山口県下にも自生することなどを明らかにし,今後タイ産種との交配育種に利用が可能である. 4) Cymbidium属の種と交配種の系統並びに類縁関係の調査(加古舜治,C.Piluek.10月4日〜10月10日).タイ国自生のCymbidiumのうち,Cym.aloifolium,Cym.cyperlifolium,Cym.ensifolium,Cym.finlaysonianum,Cym.insigne,Cym.lowianumと他のCymbidiumを含め,形態と発育開花習性並びにアイソザイム分析を行い,地生種と着
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生種は基本的に酵素系が相違し,着生種は3,4種の酵素によるアイソザイムバンドパターンにより各種が分別されることを明らかにした. 5)ショウガ科植物の自生地と植生の調査(加古舜治,Y.Paisooksantivatana,C.Piluek.7月11日〜7月24日).1)で示した場所と同一地域にてショウガ科の分布と各種植物の植生を調査した. その結果は以下に示すとおりである。 調査地 [植物種] タイ中央部 1.Muang County,Sriwilai Cave Temple標高約80m.腐植土壌タケと落葉樹林 [Thyrsostachys siamensis,Kaempferia spp.,Globba spp.,Curcuma spp.,Stephania pierrei,Dipterocarpus spp.,Gmelina arborea,Euphorbia antiquorum,Diospyros mollis] 2.Lopburi Muang County,Angsaplek村.標高約100m.石灰質土壌,草原 [Combretum quadrangulare,Terminalia bellerica,Zizyphus maruitaiana,Z.oenoplia,Curcuma spp.] 3.Lam Narai地区.標高約180m.砂質土壌,灌木雑木林 [Combretum quadrangulare,Phyllanthus emblica,Diospyros mollis,Globba spp.,Curcuma parviflora,Curcuma spp.] 4.Paahin Ngarm国立公園.標高約700m.乾燥フタバカキ森林帯 [Dipterocarpus,Curcuma alismatifolia,Curcuma parviflora,Arundi anaria spp.,Afgekia sericea,Habenar ia rhodocheila,Kaempferia rotuna,Cissus discolor,Colocasia affinis,Gingiber spp.,Hoya spp.,Costus spp.,Doritis spp.,Sonerila spp.] 5.Nakorn-Thai.標高約300.既開発地域 [Arundinaria pusilla,Curcuma parviflora,Curcuma spp.] タイ西部 6.フ-ヒンロンクラ国立公園.標高約1000m.常緑樹林帯 [Agapet es,Rhododendron,Caulokaempferia,Hedychium,Amomum,Podocarpus Impatiens,Begonia,Burmannia,Globa,Pecteilis,Curcuma parviflora,Curcuma spp.,Thunia alba,Habenaria spp.,Dendrobium spp.,Coerogyne] 7.Ban Dan Lanhoi,標高約200m.落葉雑木林 [1,2,3と類似.Curcuma parvifloraの多形質種.Curcuma spp.] Mae So.標高約200m.乾燥フタバカキ森林帯 赤礫土 [Curcuma spp.(分布個体数多し).Phyllanthus emblica] 9.Poppra.タケと落葉雑木帯.石灰質土壌 [Curcuma roscoeana,Curcuma parviflora,Curcuma spp.,Strychnos nuxvomica,globba,Eriosema,Brachychorythis,Croton,Tectona grandis,] 10.Srisawat County.標高約300m.タケと落葉雑木林 [Curcuma roscoena,Curcuma spp.(約4,5種),Melientha suavis,Vitex pinnata] タイ東南部 11.Chacoensao.タケと落葉雑木林 [Curcuma alismatifolia,Curcuma harmandii,Curcuma spp.Dipterocarpus obtusifolius,D.tubercalatus] 2.種子蛋白資源(松富直利,C.Piluek.9月24日〜10月1日) (1)ダイズの蛋白は60℃,相対湿度65%の条件下で糖類のgalactomannan(GM)と結合する. (2)この結合体はダイズ蛋白の乳濁化を促し,酸性条件下でも乳濁状態を維持することが確かめられた. (3)この結合物は食品の高温加工の場において実用性が高く,有用であるものと判断された. 3.植物性土壌有機資源(丸本卓哉.S.Vangnai.9月24日〜10月1日) (1)土壌の微生物圏は土壌中の有機物から養分を得ているため,土壌微生物は土壌から養分低下をもたらすが土壌と土壌中に保存される.しかし土壌微生物の量や活性が小さい場合には,微生物以外の要因(溶脱等)が土壌養分減少の原因となる.微生物自体は養分を吸収し作物への養分供給源となりうる. (2)暖帯地区では,土壌中の有機物含量が多いため土壌微生物圏のレベルは高い.熱帯圏でも土壌への有機物の投入は土壌微生物圏のレベルを高めることを確かめた. (3)Azollaや稲藁は有用で,azollaはNの供給源として有用で,稲藁は土壌有機物資源として有効期間が長く有用であった. 4.微生物資源(足立収生.G.Theeragool.10月4日〜10月10日) (1)タイの全国から耐熱性酢酸菌(37-40℃)の数系統を,表現形質(エタノール酸化速度,酢酸酸化能,セルローズ質物質生成能)により分別した.その主な種は,Acetobacter rancens subsp. pasteurianus,A.lovaniensis subsp. lovaniensis,A.aceti subsp. liquefaciens,A.xylinum subsp. xylinumであった. (2)これらのうち,高温条件下での酢酸生産に有用なものが数種確認された. 隠す
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