1電子帯電効果の研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05102001
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 小林 俊一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (90029471)
• 研究分担者: 勝本 信吾 東京大学, 物性研究所, 助教授 (10185829) ; 大塚 洋一 東京大学, 低温センター, 助教授 (50126009)
• キーワード: 帯電効果 / 微粒子膜

研究概要

初年度である本年度は、主要備品である電子線描画装置の導入と、たち上げに力を注ぎ、また既有の装置を使った1電子効果の実験を続けた。さらに、我々の主実験室が建物の更新のために取り壊されることになり、それを機にヘリウム希釈冷凍機などの主要装置の整理・再配置を行った。
スズ微粒子膜を使った実験では、膜が超伝導になるための面抵抗の臨界値の普遍性の限界を調べた。この系では、磁束渦糸のKosterlitz-Thouless転移と電荷Kosterlitz-Thouless転移が競合することが予想され、粒子間容量、粒子の対地容量、ジョセフソン結合の強さ、温度、磁場の強さなどのパラメタ空間で興味深い相図が展開される。本年度の実験では渦糸のKT転移の起こる条件を調べ、理論とかなり定量的に一致する結果を得た。またスズ微粒子膜の構造はこれまで、TEM像によってしか調べられていなかったが、本年度購入した電子線描画装置の一部である原子間力顕微鏡(AFM)によって観察したところ、我々が予想していた構造と完全に一致するものが得られた。
電子線描画装置を駆使する微細加工で作成した、ジョセフソン接合の一次元列の研究を行った。系の電気抵抗の温度依存性及び電流・電圧特性が、空間軸と虚時間軸からなる、2次元空間でのKT転移として扱う理論と、定性的に合う事を見いだした。また、微細加工によるジョセフソン接合の2次元配列の研究を行い、高い面抵抗をもつ試料で、電荷KT転移とみられる温度変化が測定された。これらは、いずれも今後の発展が期待できる方向である。
そのほか、量子ドットを等しての干渉実験、q-MQT、窒化シリコン膜を使った微細蒸着マスク、銅微粒子膜でのKT転移などの実験が進行中である。

研究成果

• [文献書誌] R.Yamada,S.Katsumoto,F.Komori,S.Kobayashi.: "A Possible Change Kosterlitz-Thonless-Berezinskii Transition on Grannlar Films" J.Phys.Soc.Jpn.62. 2229-2232 (1993)
• [文献書誌] N.Matsunaga Y.Ootsuka: "Magnetization of Si:P across the metal-insulator transition" J.Phys.Soc.Jpn.62. 1745-1749 (1993)
• [文献書誌] Y.Ootsuka,T.Uchiyama H.Shimada: "One-day dilution refrigerator" Cryogenics. 33. 923-925 (1993)
• [文献書誌] M.Minowa,M.Sakamoto,Y.Ito T.Watanabe,W.Ootani,Y.Ootsuka: "Cryogenic thermal detector with LiF absorber for direct dark matter search experiment" Nuclear Instruments and Methods in Physics Research. A327. 612-614 (1993)
• [文献書誌] M.Minowa,M.Sakamoto,Y.Ito,W.Ootani,K.Nishigaki,T.Watanabe,Y.Ootsuka: "Direct dark matter search program with bolometers at the University of Tokyo" J.Low Temp.Phys.93. 803-808 (1993)
• [文献書誌] M.Minowa,M.Sakamoto,Y.Ito,T.Watanabe,W.Ootani,Y.Ootsuka: "The Developement of an LiF cryogenic thermal detector for direct dark matter search" Frontiers of Neutrino Astrophysics,Proc.of the Int'l Symposium on Neutrino Astrophysics(Academy press). (1993)