1電子帯電効果の研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05102001
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 小林 俊一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (90029471)
• 研究分担者: 勝本 信吾 東京大学, 物性研究所, 助教授 (10185829) ; 大塚 洋一 東京大学, 低温センター, 助教授 (50126009)
• キーワード: 微小トンネル接合 / クーロン閉塞 / 量子抵抗 / 2次アレイ / K-T転移

研究概要

本年度は最終年度であるが、研究は計画通り順調に進行している。
常伝導単一接合におけるクーロン閉塞が、トンネル抵抗が普遍値R_Q=h/e^2(=25kΩ)以下では消滅することと、ゼロバイアスの微分抵抗のトンネル抵抗依存性はミクロな理論とよく一致することを確認した。
また、超伝導単一接合のコヒーレンスが、トンネル抵抗がR_Q/4=h/4e^2(=6.5kΩ)よりも高い場合に消滅することが確認できた。
超電導2次元アレイの振る舞いは、電荷と渦糸(vortex)という2種類の素励起に支配される。いづれの場合も相互作用は2次元クーロン型であるためにKosterlitz-Tho uless(K-T)転移が期待されるが、系の基底状態はそのいずれが優勢であるかによってコヒーレントな超伝導状態か、絶縁体かに分かれる。ジョセフソン結合エネルギーと帯電エネルギーの異なる多数の接合試料をつくり、基底状態における相図を決めた。その様子はミクロな理論とおおむね一致した。
2次元アレイを解析する上で、接合電極が無限の遠方に対してもつ自己容量を知る必要がある。アレイと同型のひとつの電極を、単一電子トランジスタの中央電極とし、遮蔽容器の電位を振ることによってこの自己容量を決めることができた。その結果は静電気学的見積もりよりはかなり小さい。
本年度末には当初計画のほとんどを完了できる予定である。

研究成果

• [文献書誌] R.Yamada and S.Kobayashi: "Precursor of Charge Kosterliz-Thouless-Berezinskii Transition in Tin Granular Films" J.Phys.Soc.Jpn. 64. 360-362 (1995)
• [文献書誌] R.Yagi and S.Kobayashi: "Charge-Vortex Duality Breaking in Small Tunnel Junction Arrays with Finite Width" J.Phys.Soc.Jpn. 64. 375-377 (1995)
• [文献書誌] A.Kanda and S.Kobayashi: "Precursor of Charge KTB Transition in Normal and Superconducting Tunnel Junction Array" J.Phys.Soc.Jpn. 64. 19-21 (1995)
• [文献書誌] S.Katsumoto: "Single-Electron Tunneling and Phase Transitions in Granular Films" J.Low Temp.Phys.98. 287-349 (1995)
• [文献書誌] S.Izawa,S.Katsumoto et al.: "Magnetoresistance Oscillation in Two-Dimensional Electron Gas under Spatially Modulated Vector Potential" J.Phys.Soc.Jpn.64. 706-710 (1995)
• [文献書誌] K.Ono,H.Shimada et al.: "A New Fablication Method for Ultra-small Tunnel Junctions" Jpn.J.Appl.Phys.in-press. (1996)
• [文献書誌] W.Ootani,Y.Ito et al.: "Sensitive Germanium Thermistors for Cryogenic Thermal Detector of Tokyo Dark Matter Search Programms" Nuclear Instruments and Methods in Physics Research. in-press. (1996)