研究概要 |
M期とS期共役の制御機構について研究は順調に進展した。即ち、M期の染色体分配に異常を引きおこすcut5変異がDNA合成を行なわずしかも放射線感受性であった(Saka and Yanagida,1993;Cell,74;383-394)。cut5遺伝子はS期の開始に必須で、これを欠損するとM期の抑制がとれ、その結果サイトキネシスまでおこる。cut5蛋白質は核に局在しその一部の配列はヒトの修復遺伝子とガン遺伝子に類似している。この蛋白の分子機能を理解することは、クロマチン蛋白が一方でS期の開始に関与し、一方でM期開始のシグナルを抑制している点で大変興味深く、今後M期とS期の共役の解明に極めて重要であろう。しかも大変興味深いことに、この変異を抑制するものとしてあるタンパク質ホスファターゼ遺伝子の欠失があった(未発表)。それゆえ、S期の遂行とM期の共役に蛋白質ホスファターゼが深く関わることが明らかとなった。本年度は本研究課題について、約10編の関連する論文を公表した。さらにまだ未発表のものでも以下に述べるような興味深い研究が進展した。染色体分配に必須なdis2ホスファターゼがcdc2キナーゼによってC末端に於て良く保存されたスレオニンが直接りん酸化され、その結果dis2の活性が低下することを見いだした(Yamano et al.,投稿中)。この結果の意味するところは、M期開始時にcdc2キナーゼが活性化し、それによりdis2ホスファターゼは活性低下しその結果M期進入が容易になり、またcdc2/サイクリンの不活性化にともないホスファターゼ活性は回復しその結果染色体分配が正常に行なわれM期脱出が可能となる。染色体分配に重要な役割をはたすdis1遺伝子についてもクローン化が成功しその産物が微小管に直接結合し、また2A型のホスファターゼ触媒単位と直接結合していることを発見した(Nabeshima et al.,submitted)。
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