特別推進研究の期間において原著論文40編を公表した。また現在5編を投稿中である。染色体分配における主要な課題は、細胞周期制御とのカップル化がいかにおこなわれているか、分配の正確さはいかに保障されているか、の二点である。本研究ではこれらの課題について以下に述べるような重要な発見と理解の進展があった。まず染色体分配に特異的な必須なCut 2タンパク質がM期レギュレーターであるサイクリンBと同様な分解ボックス配列を必要とするユビキチン分解過程で分解されることを発見した。これによりM期完了(サイクリン分解)と染色体分配(Cut 2分解)が同時に共役して起こる制御機構の根本が明かとなった。Cut 2はCut 1と非常に大きな複合体を形成しその染色体分配における具体的な役割を鋭意研究中である。染色体分配は20 SのAPC/サイクロソームという複合体の支配下にあった。この複合体を構成するサブユニットのうち4種について詳しい研究を行なったが、特にcut4は重要でこのタンパク質は細胞内ストレス、重金属、環状AMP濃度に鋭敏に対応して、PKAキナーゼパスウエーの制御下で、染色体分配の開始を調節していることが判明した。染色体凝縮の分子機構においては凝縮に必須なCut 3とCut 4がヘテロ複合体を形成するのでこれを純化し分子活性を調べた。その結果ヘテロ複合体が極めて強いDNAアニリーング活性を有することを見出した。この活性は変異体タンパク質では減少した。これから予想される、変異体核クロマチンでの一本鎖部分の増大は実験的に証明された。この結果染色体凝縮過程ではクロマチンにおけるDNA一本鎖部分を解消することが不可欠と結論した。染色体分配の正確さを決定しているMis6が動原体タンパク質であり、中期における二方向性(Biorientation)の確立に必須であることを示した。
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