動物細胞のG2期制御機構と癌化に伴う染色体異常の発生機構について研究している。本年度は、1)分裂酵母のwee1変異株を相補する新たなヒト遺伝子(min1)、2)3種類のヒトcdc25遺伝子のうち、cdc25Aについて研究した。 1)wee1変異株を相補する新たなヒト遺伝子min1を単離した。この遺伝子産物は分子量130KDの蛋白質で、その発現は、G2/M期で最高に達する。分裂酵母の種々の変異株を用いた解析結果から、リン酸化を介しないcdc2キナーゼの新たな抑制因子であることがわかった。このcdc2キナーゼの抑制活性は、min1遺伝子産物の約半分のC末端領域に存在する。更に、ある種の癌細胞で、翻訳停止の点変異が存在し、その発現量は、正常細胞に比べて顕著に低下していることが明らかになった。現在、このmin1遺伝子の染色体マッピングを行なっており、この遺伝子の近傍で転座や欠失などの異常があるか否か調べて行く予定である。 2)ヒトcdc25Aは、cdc25BやCと異なりその発現がG1/S期で見られることから、この時期で機能している可能性が考えられる。そこで、同調培養したNRK細胞にcdc25Aの特異抗体を微量注入し、細胞がM期へ進入するか否かを調べた結果、ほとんどの細胞がM期へ進入していないことがわかった。次に、坑cdc25A抗体を注入した細胞が、細胞周期のどの時期で停止しているかをレーザー顕微鏡を用いたフローサイトメトリーで検討した結果、約76%の細胞がG1期で停止していることが判明した。
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