研究概要 |
本研究では、チューブリン上のコルヒチン結合部位に作用する最小、最強のリガンドであるコンブレタスタチンA_4とビンブラスチン部位に結合する2種の環状ペプチド、フォモプシンとウスチロキシンをリードとし、夫々の薬剤結合部位における分子認識機構の解析および新規抗がん剤の設計を目指して以下の成果を得た。 コンブレタスタチンA_4をリードとする化合物として、3,4,5-トリメトキシフェニル基と3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル基をアミド、アミン、エステル、エーテル結合で連結した化合物を合成し、細胞毒性およびチューブリン重合阻害活性を検定した。その中で、多種のN-アルキル置換のトリメトキシベンジルアニリン系化合物が高いチューブリン重合阻害活性を示し、これら化合物およびチューブリンには活性を示さなかった数種のアミド系化合物が1μM以下の濃度でHL-60,KB細胞の増殖を50%阻害した。現在、これら化合物の担がんマウスに対する抗腫瘍活性を検討中である。また、上記の、チューブリンに対して活性なN-置換ベンジルアニリン誘導体に光アフィニティー標識用官能基およびアフィニティークロマト用官能基の導入を試行している。 フォモプシン、ウスチロキシンをリードとする化合物の設計では、最重要部分構造と考えられる13員環部分の全合成法を開発中であり、これに成功すれば各種誘導体の構築が可能となり、構造・活性の解明に役立つ。一方で、天然物としてウスチロキシン類では最も簡単なTyr-Val-Ile-Glyを基本単位とする環状ペプチド(ウスチロキシンD)が発見され、活性を有することから、この基本構造をもとに分子認識機構の解明と新規抗腫瘍剤の開発を行っている。
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