我々は、ヒト肝細胞増殖因子(hHGF)の産生誘導が組織の再生、修復に重要であるとの考えからhHGF産生細胞並びに産生誘導について研究している。最近、我々は、ヒト骨髄系白血病細胞株KG-1及びKCL-22が多量の免疫反応性hHGF(IR-hHGF)を産生することを見出した。本研究ではIR-hHGFを部分精製し、その性状を調べた。IR-hHGFはウエスタンブロット分析で分子量8万前後に2本のバンドを示し、初代培養ラット肝細胞の増殖刺激活性並びにA549細胞に対するスキャター活性を有するなど劇症肝炎患者血漿から精製したhHGFあるいはリコンビナントhHGFと区別できなかった。また、ノーザンブロット分析によって両細胞内に6.7kbのhHGF mRNAが検出された。以上のことからIR-hHGFはhHGFそのものであると結論された。次に138種類のヒト白血病細胞株の培養上清を用いてhHGFの産生・分泌をELISAによって測定したところ、そのうち19種類の細胞株が検出可能なhHGFを自然産生していた。これらには骨髄単球系細胞株のみならず、T及びB細胞株も含まれており、その中には高hHGF産生株として知られているMRC-5やIMR-90ヒト胎児肺線維芽細胞に匹敵するほど多量のhHGFを産生・分泌するものも認められた。これらの細胞によって産生されたhHGFが如何なる機能を果しているかについては今後調べていかなければならないが、最近報告されているように、hHGFは造血前駆細胞のIL-3及びGM-CSF依存性コロニー形成やB細胞による抗体産生の増加に関与しているのかもしれない。また、ヒト白血病細胞の中にはhHGFの受容体をコードするc-met遺伝子が過剰発現されている例が報告されており興味深い。
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