研究概要 |
TGF-βスーパーファミリーに分類されるアクチビンのシグナル伝達系が,多分化能を有するマウス胚性癌細胞(EC細胞)の増殖や分化の機構とどのように関連しているかを明かにすることを目的として研究を展開し,次のような成果を得た。 (1)ECP19細胞からクローニングしたアクチビン受容体(タイプII)をCOS細胞に発現させ,同受容体タンパク質を精製して,in vitro系においてそれが自己リン酸化能をもつSer/Thr及びTyr kinaseであることを確認した。 (2)二種類のマウスアタチビン受容体タイプII及びタイプIIBのC末端アミノ酸配列を基にペプチドを合成して,受容体タンパク質を認識するポリクローナル抗体を作製した。 (3)アクチビン結合タンパク質(ホリスタチン)がアクチビンと結合したまま細胞表層のヘパラン硫酸糖鎖に結合することや,このヘパラン硫酸との結合能がホリスタチンのC末端領域の構造の違いによって変化することを見いだした。 以上の結果はアクチビン受容体が少なくともin vitro系ではdual kinase活性をもつ新しいタイプの受容体であることを強く支持しており,アクチビンのシグナルがこれまでに知られていない未知の経路を経て細胞内へ伝達されていることを示唆している。今後,今回得られた抗受容体抗体を用いて,受容体kinaseの細胞内基質の同定を進め細胞表層から細胞質に至るシグナルの実体を明かにしたい。また,課題であったアクチビン受容体の各種変異体を作製し,kinaseドメインの役割,分担を明らかにしたい。更に,こうしたアクチビンのシグナル伝達機構が,細胞表層に結合しているホリスタチンによってどのように制御されているかについても検討を加える予定である。
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