研究概要 |
癌体質を診断するモデルとして、癌抑制遺伝子であるRB遺伝子のプロモーター領域の異常を検出することが有用であることを報告してきたが、本年度は更にRB遺伝子のプロモーター構造を解析した結果、サイレンサー部位を見出すことができた。私達が以前報告したように、RBF-1と名付けられた転写因子の結合する部位とそれに隣接するATF結合塩基配列に点突然変異が存在すると癌体質になることが知られている。今回、そのATF部位の下流に隣接しているE2F部位の作用を検討した。その結果、このE2F部位に点突然変異を入れ、E2Fタンパクが結合できなくなると、全体のRB遺伝子プロモーター活性が2-5倍に上昇することが明らかとなった。これはこのE2F部位が興味深いことにサイレンサーとして機能していることを示している。この部位に点突然変異が存在する家系が存在した場合、逆に癌に罹患しにくい家系になる可能性も考えられるが、それは今後の研究を待たなくてはならない(Oncogene,in the press)。更に、癌抑制遺伝子のp53がRB遺伝子プロモーターをp53結合部位を介して活性化することを見出した(J.Biol.Chem.,in the press)。更に、RB遺伝子産物自身がRB遺伝子プロモーターを活性化することを見出した(投稿準備中)。これらのデータより、理解の遅れていたRB遺伝子プロモーターの構造がかなり明らかになってきたように思われる。
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