研究課題/領域番号 |
05202104
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大沼 保昭 東京大学, 法学部, 教授 (50009825)
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研究分担者 |
李 鐘元 東北大学, 法学部, 助教授 (20210809)
山口 二郎 北海道大学, 法学部, 助教授 (70143352)
石井 明 東京大学, 教養学部, 教授 (10012460)
井上 達夫 東京大学, 法学部, 助教授 (30114383)
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キーワード | 情報化 / 国際法 / 国際情報流通 / 東アジア / 主権 / 普遍的価値 / 国際公共価値 |
研究概要 |
本研究は、国際的な衛星通信の時代を迎え、主権国家の並存と情報の超国家化という現実の相克のなかで、国際社会の安定と平和に国際間の情報流通がどのような役割を果していくかについて、東アジアを素材に、検討を学際的に行おうとするものである。定期的な研究会及び合宿研究会によって、本テーマにかんする基本的な枠組みの整理及び基本的な問題点の抽出が、つぎのような形ですすんでいる。第一は、国際間の流通によって伝えられる情報の内容にかかわるものであり、東アジアにおける共通の「普遍的価値」についての研究である。この場合に、その内容をなす人権や民主主義といった価値が特殊に近代ヨーロッパの産物という性格ももち、東アジアにおけるその妥当性はただちに自明ではなく、中国に典型的にみられるように、経済の市場主義化を推進しつつ政治の民主化をおさえる動きや、ナショナリズムへの傾斜がみられることとの擦り合わせを行う必要がある。また、「文化帝国主義」という言葉に示されるように、各国の文化が欧米からの情報に従属しがちななかで、東アジアにおける「普遍的価値」をどのように形成していくかという課題がある。第二は、国際間の情報流通を規定する環境条件にかかわる問題である。ASEANを取り巻いてAPEC、東南アジア友好協力条約、PMC、ARFなど地域経済協力の枠組みが重層的に存在する一方、政治秩序と経済秩序の不整合性がみられること、経済成長によって欧米支配からの自立の動きがみられること、規範的価値を実現していくための手法の多様性(たとえば、「人道的干渉」、国際組織による強制措置)、などが考慮のなかに入って来る。こうした枠組みのなかで、国家間の相互信頼を醸成していくために、国際公共価値を日本から発信していくための条件整備をどのように行っていくかという検討が、日本国内の政治主体のあり方も視野のなかにおきながら、なされる必要がある。
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