研究課題
電気通信技術の急速な発展は、放送制度の基本的な考え法に修正を迫っている。本研究では、現実の放送通信の環境の大きな変化に留意しながら、放送制度のあるべき姿についての検討をすすめてきた。とくに、念頭においたのは、つぎの3つの問題である。第1に、従来以上に、放送に対する規制の正当性が問い直されるべき客観的条件が存在する。とくに、放送事業の資本面での自由度の拡大、政治的公平の原則など番組内容規制の面での規制の再検討が課題であり、この場合に、放送市場における競争というものの果たしうる可能性について、さらに具体的なつめを行う必要がある。しかし、第2に、放送に対する政府の態度が印刷メディアに対するそれと同じであるべきかというと、必ずしもそうも言えない。むしろ、放送に対する一定の規制を保持する方が、マス・メディア全体の市場からみれば、表現活動の自由と市場における意見や情報の多様性との調和を、より適切に図ることができるという考え方もありうる。第3に、変化は、CATV(有線テレビジョン)の場面においてとりわけ集中的にあらわれつつあるように見える。CATVについては、近時、資本面での大幅な規制緩和(地域密着性の撤廃、一定規模の外資導入の容認など)が行われ、これまでの地域密着性の原理の大きな転換と見るげき状況が生まれている。さらに、CATV事業に通信事業への進出を積極的に認めることによって、伝統的な放送と通信の境界が曖昧になる場面が生じ、ここでは、従来の放送概念にとらわれずに、いかなる制度を生みだしていくかということが重要な検討課題になる。これらの問題については、すでに第3群のシンポジウムや個別論文によって一部の成果発表を行ってきたが、平成6年度においては、これらの研究の最終的な成果を刊行物としてとりまとめる方向へすすみたいと考えている。
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