研究分担者 |
内山 隆 千葉経済大学, 短期大学部, 助教授
高原 光 京都府立大学, 農学部, 助手 (30216775)
野井 英明 北九州大学, 文学部, 助教授 (60237815)
畑中 健一 北九州大学, 文学部, 教授 (00047680)
黒田 登美雄 琉球大学, 教養部, 教授 (00205254)
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研究概要 |
今年度は,本重点研究の最終年度にあたるため,昨年10月16日に山形市で開催された日本花粉学会34回大会で,安田班と合同でシンポジウム「日本列島植生史」を行ない,全体としてのまとめにとりかかった。ひき続いて,今年2月4日国際日本文化研究センターでの代表者会議で,これまで3ケ年間の成果について報告した。これらの成果は,安田・三好両班で「日本列島植生史」と題する単行本として,朝倉書店から出版することになり,各分担者は,この6月末日までに原稿を仕上げる予定になっている。 今年度得られた新たな知見は,以下の通りである。 1.長崎県福江島玉之浦の花粉分析で,マツ属がすでに6千年も前から急増する結果が得られた。これは,単に海洋植生がクロマツ株によって維持されただけかもしれないが,朝鮮半島では一般に5〜6千年前からマツ属の増加がみられ,もしかすると本島のこのような植生変遷は,朝鮮半島の植生変遷に呼応する可能性もあり,今後の検討課題ができた。 2.広域火山灰(オキ,アカホヤ)と^<14>C年代測定にもとづいて,近畿地方の照葉樹林の変遷を9300年前・6300年前・4000年前について調べた。その結果,太平洋側では,すでに6300年前に照葉樹林が形成されていたのに対し,日本海側では500〜1000年遅れたことが明らかとなった。 3.約4000年前の減暖化にともない,関東地方では海水面の低下により低湿地が出現して,ハンノキ林が拡大したことを示す興味ある結果が得られた。 4.沖縄本島宜野座村漢那ダム周辺に分布する国頭礫層中にはさまれる泥炭質堆積物の花粉分析を行なった。その結果は,マツ属・スギ属など針葉樹の占める割合が多いが,フウ属・ナンキンハゼ属など現在日本に自生のみられない樹種や,サルスベリ属など暖帯系のものが出現することから,更新世前・中期の間氷期のものと推定され,今後の研究にとって貴重なデータになると思われる。
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