本年度の研究は、日米安全保障条約(旧安保条約)の調印から1954年頃までの、日米間の安全保障を巡る問題を中心に資料を収集し、分析した。その範囲は、アメリカの国務省、国防総省の公刊資料、一部未公刊資料、日本の未公刊資料を参照することと、この問題に関する二次文献を分析する事であった。同時に、それと同時期の、東南アジア・オセアニア地域における安全保障政策に関する公刊資料・二次文献も収集した。その過程で、以下の事項が明らかとなった。第一に朝鮮戦争がアジア・太平洋の地域的な安全保障にもった重要性であり、朝鮮戦争に関する研究も参照しつつ、一九五〇年頃から一九五四年頃に時期をしぼって地域的な安全保障枠組みに関する諸国の協調と対立を分析する視点をとることとした。第二は、安全保障問題と経済問題の関連であり、アジアにおける経済発展の問題も視野に捉える必要が認識され、その問題と関連する諸文献も参照した。そしてこれらの新しい視点を、ANZUS条約や、SEATO(東南アジア条約機構)の形成と結びつけ、更にそれを日本の講和ならびに日米安保への参加と結びつける視点を得た。 また、本年度は、研究課題に関連する諸研究が数多く発表され、五十嵐班、北岡班での研究会でそれらの研究についての報告を受ける際に参加を許された。また、大磯で行われた全体シンポジウムにも参加し、経済問題、日本の内政問題に関する他班の報告からも大いに刺激を受けた。 これらの研究成果を整理し、日米安保をアジア・太平洋の安全保障の枠組みの中に位置づける試みを行っていく予定である。
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