胎児や未熟児がよく動くことは周知の事実である。かれらに見られる運動や姿勢についてAmiel-TisonやDubowitzらは受胎後年齢に応じて変化するとし、脳の発達を見るのに重要な指標であると主張してきた。この考えは現在でも我が国では多くの小児神経医たちに受け入れられている。しかし、Prechtlらはこの意見に反対し、胎児期には運動や姿勢は変化しないと主張した。そこで我々は極めて危険因子の少なく、生後18カ月における神経発達が正常であった未熟児10例を選び、出生から出産予定日までの間自然の状態を1時間以上ビデオ記録し、運動や姿勢について観察した。 その結果、個人差が非常に大きく、姿勢や運動の持続時間や1時間当たりの頻度には年齢に応じた変化はないことが明らかになった。また、Amiel-TisonやDubowitzらの言うような年齢に応じた特異な姿勢は見られなかった。 これらの結果から、未熟児の運動や姿勢については出生から出産予定日までの間(胎児期と同じ時期であって、単に子宮の外に胎児がいると考えられている期間)には年齢に応じた変化をしない。言い換えれば、この時期の運動は一応完成しているのではないかという可能性がある。そしてこの運動や姿勢は体位に応じて変化することが明らかになった。 頭の向きについては33週頃から未熟児は頭を右に向けていることが多いと言われており、これが胎児期の脳機能の左右差の現れとして受け入れられている。仰臥位ではこれまでの報告と同じように右向きが多く見られた。しかし、腹臥位では左右差は見られなかった。さらに、指の運動については、この期間には指の運動もまた年齢に応じた変化は見せなかったが、左右差については右手の方がよく指を動かすようであった。
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