研究概要 |
(1)一般名詞とソ-ト,ID記号の間には本質的な違いはないこと,論理流れ図の背後には複数言語の複雑なシステムが隠れており,従って法的推論にとって知識表現の核をなすものであること,法律体系が理論というよりモデルとしての役割を持っていることを明らかにした(西脇)(2)契約の成立,消滅をフェミニズム法理論の観点から考察し,この点を法律要件の充足→法律効果の発生という形でコンピュータ上で知識表現を行うことは現実の社会関係に即さないこと,他の形式の知識表現がありうることを示した.(3)法律エキスパートシステムは社会的な文脈から推論の前提となる知識を抽出しつつ自ら蓄えた知識を用いるものでなくてはならないこと,従ってシステム外から推論に必要な知識を問題に応じてインプットできるようにする対話型インターフェースが必要であること,また、推論エンジンは「暗黙知」と呼ばれる、推論の前提となる知識をも取り込み、操作できねばならないことを示した(森際)(4)裁判官の持つエキスパーティスの理解においてスジという彼らの用いるジャーゴンは重要であるという認識のもとに裁判官経験者に対する面接調査を行った.その結果,スジの善し悪しは当事者の属性と関連する場合が多いこと,事件の表層ではなく深層の理解とスジとが関連があることなどいくつかの暫定的知見をえた.現在,裁判官経験者を対象とするシナリオ研究の手法による調査を準備中である(松村,太田).
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