研究概要 |
大規模な法律知識ベースを構築した場合,情報源の分散性と構築作業の並列性を鑑みれば,その実用段階において知識ベースの一元管理は困難である.本研究は,計算機ネットワーク技術に基づいて分散法律知識ベースを構築する際に生じる諸問題に対して,プログラムスライシングによる無矛盾性制御,ピギーバック及び自律分散による動的負荷分散からアプローチした.まず,無矛盾性制御に関してプログラムスライシング技術を適用することによる解決を試みた.元々プログラムスライシングは手続き型逐次実行プログラム上に定義されデバッグに用いられる技術であるが,これを分散プログラムに適用するための拡張について考察した.その結果,プログラム内の変数をデータ要素,代入文をデータ間の依存関係,制御フローをデータの依存関係が成立する条件に写像する事によって,知識ベース内に矛盾が発見されたときに,誤りが存在するデータ群の範囲を特定することが可能となることがわかった.動的負荷分散のアプローチでは,各リソースの状態把握とそれに基づいた配送先決定が重要である.この問題に対し,まずジョブ要求とジョブ結果に現在の状態情報を付加した双方向ピギーバックに基づく方法を考察した.この方法では,リソース情報をジョブ要求・結果に付与して配布する.分散配置されたジョブ配送器はこれによって現在の環境の近似値を得,サーバ機種・通信遅延・ジョブ特性を考慮してジョブを配送する.本手法は高負荷時に有効であることを明らかにし,その理由をピギーバック情報の信頼性から解析した.また,自律負荷分散方式ではタスクを持つノードが他ノードへの依頼の判断並びに他ノードからのタスク受け入れの判断を,自律的に判断する方式を開発した.評価の結果,タスクの投入が不均一な条件下においても負荷均衡が図れる点,全負荷が増大しても処理時間の増加を抑制することができることを示した.
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