研究概要 |
カルモデュリンにカルシウムイオン(Ca)が結合すると高次構造が変わり、これが標的酵素の活性化に重要な役割を持っている。Ca結合により、カルモデュリン分子のC末端側1/2(Cドメイン)に誘起される高次構造変化の実体をとらえることを試みた。(1)脊椎動物カルモデュリンのTyr138(ドメインIV)はGlu82(ドメインIII)と水素結合しており、これがCドメインの高次構造変化の鍵を握っている可能性が考えられる。酵母カルモデュリンの同じ位置はIle138なので、この水素結合は考えられない。Ile138をTyrに置換した変異体(YCMY,YCMDY)をつくった。その結果、Tyr138を導入してもPDEの活性化能の改善はみられなかった。Ca結合によるTyr138の紫外吸収差スペクトルを比較すると、いずれも鶏カルモデュリン同様にブルーシフトを示したが、YCMY、YCMDYは286nmの谷が288nmの谷よりも小さく、鶏カルモデュリンのCドメインの高次構造とは微妙に異なることが明らかになった。水素結合が形成されると、鶏カルモデュリンのように286nmの谷がより深い形になるのではないかと推定して、これを確認する実験法を考えている。DELTA A288のCa滴定結果から、高いPDE活性化能を示すものでは、Caの最大結合数(3または4モル)によらず、Caは、まずCドメインに結合するという傾向が得られた。Cドメインへの優先的なCa結合がPDEとの強い結合に重要であると考えられる。実験例数を増やしてはっきりとさせたい。(2)酵母カルモデュリン(YCMO)と、Caを4モル結合する変異カルモデュリン(YCMD)について1H-NMRスペクトルを測定して比較し、Ca結合に伴うCドメインの高次構造変化について検討した。(3)Ca結合に伴うグローバルな構造変化を知るために、キメラカルモデュリン(C4Y,C4Y140E)をもちいて、溶液X線小角散乱法による研究を試みた。
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