還元剤の存在下での金属イオンによる酸素分子の活性化は生体中の反応のみならず、実験室系でも良くみられるものであるがこのときの酸素分子の活性化にたいする金属イオンの作用機構については全く解明されてない。今回は、とくにUdenfriend系とアルデヒド存在下での鉄錯体による酸素分子の活性化について検討した。 Udenfriend系は、鉄(III)-edta/アスコルビン酸系が芳香環化合物の水酸化反応を行うことで有名であるが、この系はまたグアノシンと反応してその8-OH誘導体を与え、それが発ガンの原因とされていることからも注目すべき反応系である。鉄(III)-edta錯体の溶液にアスコルビン酸とグアノシンを加えておくと、その8-OH誘導体が形成されるのが高速液体クロマトグラフィーから確認できる。この反応機構を解明するため鉄(III)-edta錯体の電気化学的測定を行った。鉄(III)イオンは、-0.24Vで還元されるが、これを酸素分子の存在下で行うと、還元電流値の増大が見られ、これはこの電位で、鉄(III)-パーキサイド付加体が生成していることを示している。この条件下でグアノシンを存在させておくと、やはり8-OH誘導体の形成が観察されることから、Udenfriend系での活性体は、鉄(III)-パーオキサイド付加体であろうと推定された。 サイクラム(cyclam)を配位子とする鉄(III)錯体は、アルデヒドまたは不飽和脂肪酸の存在下で、酸素分子を活性化することを見いだした。この機構については、酸素分子が水素結合を介して配位子系と結合でき、かつそれが原因で酸素分子があたかもオキソ酸素原子のように振舞うことが重要であると結論された。
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