1)ウマ心臓アポミオグロビンの酸性水溶液の遠紫外CDスペクトルを20Cで塩酸濃度を変化させて測定したところ、pH4前後で天然構造から酸変性構造への転移が起こることが観測された。 2)そこでこの転移領域でpHをさまざまな値に固定し、遠紫外CDスペクトルの温度変化を測定したところ、高温側と低温側にそれぞれ等CD点を示す転移が観測され、それぞれが高温変性、低温変性過程に帰属された。 3)さらにそれぞれの温度領域でCDスペクトルを精度よく測定して等CD点を求めたところ、pHに関わらず高温変性過程では203.4±0.2nm、低温変性過程では205.1±0.2nmでほぼ一定であり、両者は明らかに異なることが判明した。 4)この結果はミオグロビンの高温変性状態と低温変性状態とでは二次構造が異なることを意味する。すなわち、アポミオグロビンは少なくともpH4-4.6の範囲で、熱変性状態---天然状態---低温変性状態、の3状態の平衡にあることを強く示唆するものである。 5)これに対応するNMRスペクトルにも低温変性状態と高温変性状態とでは違いがあることが認められた。以上の結果に基づいて低温変性状態特有の構造と温度ジャンプに伴う速い立体構造形成との関係を追求してゆく。
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