研究概要 |
我々は、ポドフィロトキシン(PD)及びその誘導体(例えば、VP-16,VM-26)によるDNA切断反応機構に対して、金属との錯体形成に基づく活性酸素種(・OHなど)の関与について検討してきた。本研究においては、PDの構成分子としてのシリンガ酸(SA)及びPDの脱メチル体(デメチルエピポドフィロトキシン、DEPD)とCu(II)イオンとの錯体によるDNA切断及びその認識における分子間相違性について考察した。両錯体とDNAとの結合定数(Km)をUV吸収差スペクトルから求めたところ、Cu(II)-DEPD錯体はCu(II)-SA錯体よりも10倍以上強くDNA分子に結合し、インターカレーション以外によるDNAへの結合様式の存在が推察された。また、プラスミドColElDNAに対する切断反応に対して、Cu(II)-DEPD錯体はCu(II)-SA錯体よりもより濃度依存的な切断傾向を示した。このことは、DNA認識に対するDEPDのA,B,C及びD環の働きを強く示唆するものと考えた。また、M13mp18DNAを用いるDNAシーケンス法による解析の結果、Cu(II)-DEPD錯体はGCリッチな配列におけるG及びC塩基に、Cu(II)-SA錯体はC塩基においてのみ特異的な切断(あるいは結合)位置を示した。また、DEPD及びSAのDNA認識・切断の違いを見いだすため、ColElDNAの制限酵素Pvu IIあるいはTaqI消化によるフラグメント(それぞれ371〜4863bpあるいは123〜988bpフラグメントを生成)を用いて検討した。いずれのフラグメントに対してもCu(II)-DEPD錯体の法がより強い切断活性を示した。
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