本研究は、アンチセンス、アンチジーン法など特定遺伝子の発現制御や、ヒト遺伝子全塩基配列決定の実現のために必要な塩基配列特異的な切断分子の合成を目指し、修飾オリゴマーの合成と、その利用を目的としている。今年度の研究によって、以下に示す知見及び成果が得られた。 1) 修飾オリゴヌクレオチドの合成 抗生物質によるDNA切断の機構及び分子認識を解析する目的として、また切断分子のDNA塩基配列認識部位として、2-アミノアデニン、8-メチルグアニン、4'-メチルチミジン、4'-チオチミジン、ステロイド、5'-ヨードシチジン、2'-ヨードウリジン、5'-ブロモシチジンを含む修飾デオキシヌクレオチドの合成法を確立し、その反応性、物性を検討した。 2) DNA切断機構の解明 ラジカルの寿命を測定する化学プローブであるラジカルクロックを、ブレオマイシン金属錯体の反応サイトに導入し、それぞれの錯体により生成するラジカルの寿命について検討を行なった。その結果、コバルトによる反応においても鉄錯体と同様、4'位水素引きぬきにより4'位のラジカルが生成していることを世界に先がけて確認した。 3) 相互作用モデルの構築 デュオカルマイシンがディスタマイシンにより、新たにグアニンとも反応することから、協奏的認識という概念をはじめて提案した。この結果に基づき、デュオカルマイシンとディスタマイシンがマイナーグルーブ上に2枚入るモデルをつくり、分子力場計算により最適化を行ない、コンピューターグラフィックスにより視覚化した。
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