RNAの多様な高次構造と多彩な機能役割の相関を、X線構造解析によって原子レベルで高次構造を解明し、機能役割を構造化学的側面から明らかにした。先にX線解析を行った13ヌクレオチドからなるRNAoligomerの結晶構造に基に、理論的解析を試みた。RNA分子は塩基配列UUCGを持ち、この部分をループとする安定なヘアーピンをとることが、NMR測定などの溶液学的構造解析によって明らかにされているが、X線構造解析の結果はヘアーピン構造ではなく、2重鎖構造をとり、2重鎖分子の中央部分では4つの連続した非ワトソン-クリック(W&C)型塩基対をもつ、新規なA型RNA構造であった。この非W&C型塩基対が安定に存在するには、系統的に配置した水分子が重要な役割を果たしていた。この水分子の位置、動的構造決定には、X線構造解析が有用である。結晶は分解能が1.8Aであり、今回の構造精密化によって、49個の水分子の構造が明らかとなった。水分子の構造化学的役割を検討した。特に、UC塩基対内にある水分子が、通常のプリン-ピリミジン塩基対と同じジオメトリーとすることで安定化し、疎水場の環境に置かれ、外界の溶媒領域の水から融離し、活性度の低い水であり、かつ外界水とはmsecレベルの遅い交換で、NMR測定で観測の可能性をもっている興味深いものであった。また新しい考えに基づく、核酸の構造モデル作成プログラムHLX4を作成した。文献などに示される、塩基部分のらせんパラメータを入力データとして、構造エネルギーが最適化されたモデルを構築する。汎用されているUNIXで走り、国際的なプログラム交換機構QCPEに登録する。
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