本研究ではシリコン基板上に有機金属気相成長法(MOCVD)でGaAs、GaP、AlAs等の化合物半導体が成長初期の段階で原子レベルでどのような機構で成長し、転位が導入されるかを明らかにし、シリコン上に欠陥の少ない化合物半導体を成長するための指針を示すことを目的として研究を行った。特に、格子定数差、熱膨張係数差、極性/無極性成長が結晶成長初期過程に及ぼす影響を系統的に調べ、原子レベルでの結晶成長機構を検討した。具体的には以下の結果を得た。 1.面方位(100)シリコン基板にオフ角度をOから6°まで変化させてGaPを結晶成長し、断面透過電子顕微鏡、エッチピット、表面形態によって評価し、以下の結果を得た。 (1)オフ角度が1°以下の場合は多くのアンチフェイズドメインがシリコンとGaPの界面に観測され、表面まで伝搬しているものと途中で消滅しているものが観測された。また、エッチピット密度は非常に多く、10^7cm^<-2>以上である。 (2)オフ角度が2°の場合はアンチフェイズドメインは観測されるが、すべて途中で消滅している。 (3)オフ角度が4°以上の場合はまったくアンチフェイズドメインは観測されず、表面は平坦であり、1.6×10^6cm^<-2>の低いエッチピット密度の結晶が得られた。これは、表面を界面に存在するアンチフェイズドメインが表面を劣化させ、エッチピット密度を増加させていることを示している。 2.GaAs基板上にGaAsPを結晶成長し、結晶内部で歪分布がどの様になっているかをPの組成比、膜厚を変化させて調べた。
|