発見的な学習を支援する知的教育システムに関する研究を行った。本研究では、発見的学習とAIとの関係から、2つの立場より研究を行った。一つは、知的教授システムを実験台にして、知識処理の特徴を体験を通して学習させる方法に関する研究、今一つは発見学習の支援方法に関する研究である。 前者は、知的教授システムの特徴的機能が知識処理によって初めて可能となることから、知識処理を学ぶよい教材となるのを利用して、実験によって知識処理の深い理解を得させるための環境に関する研究である。ここでは学習環境の構成方法と、計算機によってシミュレートされた疑似学習者の役割について提案を行った。 後者は、システムが学習者の振る舞いを認識して、学習者の意図に対して適応的な発見支援をめざす。このとき問題になるのは、学習者の意図を推定する方法と支援の方法である。我々は、学習者がすでに獲得済みの背景知識を用いながら、実験環境での試行錯誤を通して新しい概念を獲得するとの考えにたって、学習者とシステムが実験環境を共有し、協調作業を行う学習支援システムのアーキテクチャと、そこでの支援方法を提案した。ここでは発見のプロセスを、実験装置とデータの整理・加工のための道具の状態で表現される状態空間中での、それぞれの部品で定義されているオペレータの適用による移動としてモデル化した。この状態空間は、実験によるデータ収集を行う操作空間と、実験データをもとに仮説を生成する仮説空間に分けられる。また、システムが与えられた環境から規則を発見するため、そして学習者の指導のために用いる発見の戦略を、個々の環境に依存したもの、一つの領域に共通なもの、全体に共通なものの3レベルに分け記述した。
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