研究概要 |
我々のグループでは、これまでに数nm程度の結晶の単体物質クラスター(例えば、Au,Cu,In等)に室温あるいはそれ以下の温度で異種原子を蒸着すると、バルク固体の拡散係数からは予測しえないような急速な合金化が起こり、固溶体合金あるいは化合物クラスターが生成することを電顕内その場観察法によって調べ報告してきた。本研究では、この自発的合金化の機構を明らかにするために、さらにその詳細について調べ、以下のことを解明した。 (1)Auクラスター中へのCu原子の自発的合金化による固溶体合金クラスター生成を原子的尺度で電顕内その場観察し、その過程がquasi-melting状態ではなく固相状態であることを示した。 (2)Pbクラスター中へのAu原子の自発的合金化による化合物クラスター生成を動的に高分解能観察し、合金化はPbクラスター中の双晶等の微細構造に依存せず、クラスター中のAu濃度が化学量論組成に達すると同時に粒子全体が単結晶化合物に変態する過程を経ることをとらえた。 (3)Alクラスター中へのSb原子の自発的合金化によって生成するAl-Sb合金クラスターはアモルファス構造をとるが、AlクラスターのコアをInとする結晶性は向上し、ZnS構造のAlSbクラスターが生成する。従って、Al-Sb合金のように共有・イオン結合によって支配される固体において、そのクラスターの原子構造は結合の柔軟性と結晶核生成確率とのバランスによって支配されることがわかった。
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