2次元量子反強磁性体の新しいモデルとして、飾り付き正方格子上の競合する交換相互作用をもつハイゼンベルグモデルを提出し、その基底状態を調べた。この系の古典近似の基底状態はパラメーターの広い範囲で巨視的な縮重度を持ち、量子系では新しい型の基底状態を示す可能性がある。本研究では、S=1/2のモデルに対して厳密対角化の方法に依って基底状態を求め、その知見に基づいて任意のSに対する無限系の基底状態の相図について考察した。 1。スピン数24の系について、周期境界条件のもとで厳密対角化の方法を用いて基底状態を求めた。モデルに含まれる1箇のパラメーターを変えていくと、7つの相が現れる。それぞれの相において、基底状態におけるスピン対相関関数を計算した。 2。競合する相互作用の比が小さいときに現れる相について、摂動論を展開した。1つの副格子上のスピンはネール秩序を保持し、他の副格子上のスピンはそれらに垂直な面内でヘリカル構造をとる立体的なスピン構造を示す。 3。厳密対角化の結果と摂動論の結果を総合して、無限系のこのモデルには7つの相が現れると結論した。そのうち5つは、完全に分極したフェロ相、キャントしたフェロ相、立体的スピン構造、キャントしたフェリ相、及びネール秩序をもつフェリ相である。残りの2つの相は、厳密対角化の方法で確定的な結論を得るのは困難である。 以上の成果については、近いうちに雑誌論文で発表する予定である。今後、変分モンテカルロ法を適用することを計画している。
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