変分量子モンテカルロ法は、従来の局所密度汎関数法を越えて電子相関効果を定量的に正しく取り扱うことのできる、有力な方法の一つである。しかし通常の方法ではモンテカルロサンプリングの収束がきわめて遅く、計算時間がかかりすぎるのが難点である。サンプリングの統計誤差を減らすため、われわれはハートリーフォック法を併用する方法論を提唱しているが、本研究ではその方法と同時に1電子軌道の新しい最適化手法を組み込んだ原子・分子の電子状態計算プログラムを開発した。同じ方法はガッツビラー変分関数を用いたハバードモデルのモンテカルロ計算にも適用できるものと考えられ、現在その検証を行っている。また東京理科大学の諏訪雄二氏と協力し、水素結合型誘電体の相転移における同位体効果の起源を明らかにする目的で、非断熱効果を取り入れた水素原子・電子系の変分モンテカルロ法シミュレーションを行った。その結果、同位体効果における非断熱効果の役割については否定的な結論が得られた。
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