本研究では不規則性によつて生ずる電気伝導度の消失というアンダーソン転移を数値的に調べた。ここでは反復法による局在長の計算を行い、これと有限サイズスケーリング法を組み合わせて、局在長の発散の臨界指数を決定した。モデルとしては3次元のrandom phase model(物理的には磁場がランダムな系に対応する)を用いてた。この系は従来のスカラーポテンシャルによる局在とは異なる、ベクトルポテンシャルによる局在を示す大変興味深い系である。転移点付近での局在長の発散の様子から局在長の臨界指数の値を1.1程度と評価した。これとの比較のため、ベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャル双方が乱れている系での計算を行い、この系は従来の磁場が0のときのアンダーソン模型の示す1.4程度の臨界指数を示すことを明らかにした。これらよりrandom phase modelが新しいユニヴァーサリティクラスに属しているのではないかと推測した。 また、本研究では不規則電子系の量子順位統計を調べた。不規則ハミルトニアンが示す、準位間反撥は古くは1950年代から知られている。本研究では局在状態と非局在状態では準位間反撥のサイズ依存性がことなるという視点に立って、臨界指数が決定できることを示し、新しい数値計算結果の解析方法を見いだした。この方法を具体的には強磁場中の2次元電子系に対して適用して、従来の方法から得られた臨界指数の値を再現した。他の膜型に対してこの方法が同じように有効かどうかは現在確認中である。
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