本研究は、高感度ファブリ・ペロー干渉計に使用できる高精度、高透過率もしくは高反射率、高レーザ耐力、高信頼性を有する光学素子を提供し、同干渉計による重力波の検出を側面より支援することを目的とする。高出力レーザの現状での最大の問題点は、レーザ照射による光学素子の損傷である。レーザ損傷のしきい値が高くなければ、高出力レーザの開発が容易になると共に、装置全体を小型化し、高信頼化できる。このしきい値は材料、表面粗さ、表面層の状態に依存する。また、高反射率・低損失ミラーの製作においては、散乱の原因となる光学面の表面粗さ並びに加工変質層が極めて重要であることは論を持たない。 本研究の研究実績および結果を要約すると以下のようである。 1)小型空冷のアルゴンイオンレーザを設置することにより内部全反射顕微鏡システムを完成させ、その検出限界を検討した。検出感度は強い異方性を有し、レーザの光路と垂直方向の欠陥に対しては感度が高く、重力波検出のためのファブリ・ペロー干渉計のレーザ共振器に使われている超高精度光学部品の表面欠陥をも検出することができた。 2)フロートポリシングにより合成石英を0.1nm rms以下の表面粗さに仕上げることができ、その面は内部全反射顕微鏡で観察しても研磨による欠陥が検出できないことが明らかとなった。 3)各種加工を施した合成石英、ULTRA30並びにFK5の試料面にYAGレーザの3倍高調波である波長355nmのレーザを照射してレーザ耐力を測定した結果、材料としては表面のレーザ耐力は合成石英、ULTRA30、FK5の順に高く、FK5のフロートポリシング面のレーザ耐力は17.2J/cm^2であり、合成石英光学研磨面に比べ1.7倍レーザ耐力が高いことが明らかとなった。 4)光学ガラスの超精密研削で研磨面よりも滑かな面を創成することができる。しかし材料の透過率は研磨面に比べ0.3%低下することを明らかにした。
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