超並列アーキテクチャの研究として、トーラス・リング・バス階層構造の結合ネットワークによる並列計算機アーキテクチャを提案した。今年度は64プロセッサからなるプロトタイプシステムを完成させ、基本性能測定を行った。 プロトタイプシステムでは、4プロセッサをリングとバスで接続してクラスタとし、これを4×4のトーラス接続にしている。システムは仮想的な2次元や3次元のメッシュ構造や、複数ユーザによる分割利用にも対応できるよう設計された。提案する接続方式の特徴は、単位プロセッサのリンク数が3と少なく、多数のプロセッサに対する実装が容易な点であるが、このことはプロトタイプの完成により実証された。また、基本性能についての実測より以下の値が得られた。(1)単位計算能力は10〜20MFLOPS程度。(2)クラスタ内の通信は、セットアップが約5マイクロ秒、転送速度が32MB/秒。(3)クラスタ間は、セットアップが約5マイクロ秒、転送速度が12MB/秒。 当初の計画では、今年度内に数値シミュレーション問題を実装して評価を行う予定であったが、ハードウェア製作に手間取り、今年度の成果は基本性能の測定までとなった。現在、ソフトウェア環境の整備と流体計算問題の実装を進めており、来年度前半には応用問題による評価結果を得る予定である。応用問題における計算量や通信量の測定値と、上記の基本性能値より、提案するシステムの有効性や問題点を明らかにする。
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