研究概要 |
感性情報には解釈すべき制約条件が多数あり,それらをあらかじめ少数の規則により与えることは困難である.さらに主観的で刻々と変化する状況に依存するので,処理法が静的には定義されず,動的に獲得せねばならない.人工知能における学習の手法を用いて「感性形成」を行ない,制約条件を学習させることがこのような感性情報に対処するための有用なアプローチとなる.この観点から,音楽の編曲を題材とした感性形成について研究し,実際にシステムを構築して実験を行なった. その結果,初期理論を用いて編曲を行なった場合と,感性形成による曲の洗練を行なった後に編曲を行なった場合とでは,それぞれ20〜60%,40〜80%の割合で作曲家の編曲とコードが一致した.洗練によって平均20%の一致率の向上が見られる.これは,訓練例中の特徴あるコードの選択法を学習でき,それが編曲対象の曲に反映されていることを示す.ただし,編曲対象の曲に特殊なコードばかりが使用されている場合には,洗練による一致率の向上は少ない.実際に聴いてどのように感性に訴えるかの比較も行ない,曲の雰囲気が改善されていることを確かめた. さらに,「明るい」,「暗い」,「好き」,「嫌い」といった音楽についてヒトの持つ感性を学習の手法を用いて抽出する研究も行なった.和音および短いメロディを自動生成し,被験者10人の持つ感性を対話形式で入力し,学習するシステムを作成した結果,曲についての一般的な感性および各人の個性的な感性の両方を抽出することができた.
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