本研究では、コンピュータグラフィックス(CG)における感性情報の現れ方を工学的に表現できる方法を見いだすために、まず、CGにおけるモデルについて従来の応用例から5通りのタイプを見いだした。それらの中には、映像の生成における感性情報の現れ方に関して、次のような異なる種類がみられる。(a)映像として生成すべき対象、あるいは目標が明確であり、生成された映像と目標の間の類似性の評価に感性が現れる。また、生成される映像の性質(評価者の感性も含めて評価される属性の内容、あるいは評価値)に変化を起こさせ、かつ、変化を制御する操作(パラメータ値の変更、など)の内容も明確である。(b)目標映像が明確ではない(恐らくユーザの頭の中のある種の「イメージ」と思われる)が、生成された映像を頭の中の目標と比較して、評価することはできる。また、目標に向かって映像を変形していく操作、手順は明確で、実際に加えた変形操作の内容も具体的に記録できる(変形の方向(増減、等)とか変形の量は別である)。感性は、恐らくこの変化操作の内容の選択に用いられる。(c)生成される映像に関しては、目標とする映像のイメージも(映像を制御するという意味での)操作も特に意識されるわけではないが、結果の質においての定性的評価(感性による)はできる 次に、実際に感性情報の量的な評価を試みるために、顔画像の生成過程を取り上げ、物理的にレンジファインダなどを用いて計測した人の顔画像からデザイナが順次変形して、目的とするキャラクターの顔に達するまでにどの様な変形が行われているかを、実際のアニメーションのキャラクターのデザインを例に用いて調べてみた。これは主として感性に基づいて画像を生成、変形する操作の典型例であり、感性情報がどの程度の画像強度の中に含まれうるかを明らかにしている。
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