1.ヒト腰椎(L4-5)脊椎機能単位(functional spinal unit:FSU)の連続的な前方-後方屈曲運動における力学的特性を調査した。その結果、全後方要素はL4-5FSUの前方屈曲剛性の約40〜50%、後方屈曲剛性の約30〜75%に関与し、その効果は後方屈曲では高変形領域ほど有意に大きかったが、前方屈曲では変形領域間の差を認めなかった。前方屈曲剛性には棘上・棘間靭帯の関与は少なく、椎間関節(両側で約30%)と黄色靭帯(約15%)が屈曲剛性に関与していた。後方屈曲剛性には棘上・棘間靭帯(16〜33%)と椎間関節(両側で15〜45%)の関与が大きかった。また、屈曲剛性を最小にするような回旋軸の位置は、前方屈曲では椎間板の前方部、後方屈曲では椎間板の後方部に存在した。 2.ヒト腰椎FSUの連続的な前方-後方剪断運動における力学的特性を調査した。その結果、全後方要素はL4-5FSUの前方剪断剛性の約60〜70%、後方剪断剛性の約40〜45%に関与していた。前方・後方剪断剛性ともに椎間関節の関与が大きかった。椎間関節の片側切除により前方・後方剪断剛性ともに約25〜30%減少したが、両側切除後では前方剪断剛性値が著明に減少した。棘上・棘間靭帯切除と黄色靭帯切除の影響はほとんどなかった。 3.ヒト腰椎FSUの連続的な引張-圧縮負荷およびねじり負荷における力学的特性に及ぼす椎間板変性の影響を調査した。その結果、後方要素が健常であれば、椎間板変性により圧縮およびねじり剛性値は増加し、引張剛性値は減少した。後方要素の切除は各剛性値を減少させた。後方要素各成分では、椎間関節が圧縮およびねじり剛性値に大きく関与し、ねじり剛性において、この関与は変性群でより著明であった。
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