1。正常脊柱のin vivo動態特性:体幹前屈時における下位腰椎の連続変形挙動をX線シネ撮影で測定した。このような測定例はまだない。その結果、腰椎各椎間板は体幹前屈と同時に変形するわけではなく、体幹前屈開始時からある時間をおいて、上位椎間板から順にステップ状に変形する。各椎間板の変形は急激で前屈終了前にほぼ一定となる、こと等を確認した。この現象の生理学的意味を考えると、腰椎の上位椎間板では、体幹が最大運動をしなくとも、常に最大の変形が生じていることになる。このことが腰椎上位椎間板で変形疾患の多いことと何ら椎間板の力学的機能適応とが結び付くかもしれない。 2。三次元有限要素法による側弯症形態シミュレーション:単純な全脊柱モデルによる三次元動態シミュレーションを行った。その結果、脊柱が側屈するときに生じる回旋変形、すなわちカップリングモーションは、脊柱の持つ生理的な弯曲(腰部で前弯、胸部後後弯)が起因することを確認した。このような報告例は見当たらない。また、全脊柱三次元モデルを作成した。このモデルで側弯症の頂椎にあたる胸椎体の側面に引張りの成長力をさまざまな方向に負荷し、その塑性変形(永久変形)解析を行った。その結果、臨床例で見られる側弯症が計算機上で再現できた。このことから、特発性側弯症は、成長力の不整合による力学的適応機能性の結果であることが示唆された。
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