生体の支持組織の一つである靱帯、腱は粘弾性体であるために初期張力を緩和する。したがって関節内靱帯では、その張力を計測する目的で関節包を切開しただけでその張力は変化する。この点を解決するには、in situでの計測方法を開発する必要があった。新しく開発した方法により膝前十字靱帯に加わっている張力に計測に成功し、Journal of Orthopaedic Researchに掲載された。 また、力学的負荷変化に伴う腱の応答は単に物理的な性質ばかりでなく、細胞レベルでのコラーゲンの成合成にも関与することが明らかとなり、日本臨床バイオメカニク学会誌に発表した。その結果により、リハビリテーションの意義が一部解明された。 一方、腱、靱帯の温度環境変化に対す挙動を解明し、Japanese Journal of Sports Sciencesに掲載された。その中でさらに靱帯内水含有量が最も大きな影響を与えることを解明した。 この靱帯内水含有量と力学的挙動の間には密接な関連があり、その粘弾性特性を変化させることを、日本臨床バイオメカニクス学会誌の中で報告した。 靱帯の張力の維持機構にも検討を加え、前負荷状態には依存せず、すなわちその履歴にあまり影響を受けないことが分った。この結果を第20回日本臨床バイオメカニクス学会で発表した。 靱帯の力学的負荷変化に伴う組織学的、生理学的、挙動の一部が解明されたにすぎず、今后はさらに組織の顕微鏡レベルでの対応についても検討をさらに行う必要があり、その準備を行っている。これらにより力学的環境と組織構築のメカニズムが解明されると考えている。
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