本研究では、超臨界水中での反応晶析を積極的に利用して、廃液から金属を金属種ごとに分離しつつ回収する手法の開発を行っている。硝酸アルミニウム、硝酸セリウム、硝酸コバルト、硝酸ニッケルを原料とし、亜臨界・超臨界水中での反応晶析を行い、その速度論的解析を行った。本年度は、特に実験の精密化をはかるとともに、さらに広い温度、圧力条件で実験を行った。その結果、加水分解速度は金属種により大きく異なること、また超臨界条件下では亜臨界水中では析出しなかった金属も酸化物として析出させることができることがわかった。この結果より、廃液から金属を分離回収できる可能性を示すことができた。粒子の成長過程についても反応時間を変えた実験、多段吹き込み実験等を行ない、その結果に基づき晶析機構の検討を行った。比較的溶解力のある亜臨界水には、前駆体ゲルが多量に溶解しており、金属イオンが消失した後も粒子成長に取り込まれ粒子成長が進行するが、超臨界水中ではゲルの溶解度が小さいため、粒子成長が生じにくい。したがって、反応晶析しにくい金属系も金属酸化物として晶析しやすいし、また微粒子が生成しやすい。また、原子炉からの放射性廃液の模擬廃液を原料として、回分式実験装置を用い、200、300、400℃と段階的に昇温し、それぞれの温度で析出した金属酸化物を回収して金属の群分離の可能性を検討した。高濃度の酸が共存している条件であるにもかかわらず、Fe、Mo、Pd、Zrについては、200℃でも2分間の反応時間内でほぼ100%近くを酸化物微粒子として回収できた。Crは、300℃、2分間で80%近くを回収できた。400℃では、Ce、Mn、Niの析出が進行した。今後、加水分解機構および粒子成長機構についてより詳細な検討を行えば、本手法による精密な金属の分離・回収も可能であると考える。
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