研究概要 |
一定構造のトリグリセリドの合成に有効なリパーゼによるエステル交換反応の効率化を目的とし、超臨界二酸化炭素(SC-CO_2)抽出によるリパーゼ反応副生成物の選択的な除去を試みた。実験には、SC-CO_2への溶解度が著しく異なる中鎖脂肪酸(カプリル酸、C8)のトリグリセリドと長鎖脂肪酸(オレイン酸、C18:1)メチルエステルの間の1,3-位特異性リパーゼ(リポザイム)による交換反応を行った。また、脂肪酸の分離効率を高めるため、反応容器に温度勾配を設けた還流管を設置した。 カプリル酸メチル、オレイン酸メチルおよびトリカプリリンを2:8:1のモル比で混合し、還流塔に下部から上部へ60〜80℃の温度勾配をかけ、10MPaに昇圧して気相および液相の溶解成分を分析したところ、トリカプリリンの気相への溶解度は極めて小さく、抽出条件の設定においては、メチルエステルのみを考慮すればよいことが明らかになった。また、カプリル酸メチル/オレイン酸メチル混合物(モル比4.8:1)の分離条件を検討したところ、10MPaにおいて下部から上部に40-100℃の温度勾配をかけるとカプリル酸選択率が101.2と高くなることが分った。 以上の結果から、分離塔に40-100℃の温度分布を付与し、SC-CO_2抽出しながら40℃、10MPaでトリカプリリンとオレイン酸メチルのリパーゼ触媒によるエステル交換を行った。その結果、液相中のカプリル酸メチル/オレイ酸メチルのモル分率は、バッチ反応ではエステル交換反応の進行に伴って急増したのに対し、SC-CO_2抽出を伴う反応の場合にはモル分率が低く保たれた。トリグリセリドへのオレイン酸導入率も、バッチ反応ではすぐに平衡に達したが、SC-CO_2抽出の場合には連続的に反応が進行し、SC-CO_2抽出の反応促進効果が確認された。
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