超臨界流体中における有機物の相互拡散係数についての報告が増えてはきたが未だ実測値は少なく、測定されている溶質は非常に限られている。また、その相互拡散係数の有効な推算法は確立されていない。従って、本研究は(1)超臨界流体中での各種溶質の相互拡散係数D_<12>を測定すること、(2)この測定データを用いて従来提案されている推算式の有効性を検討することを目的とした。 相互拡散係数の測定はトレーサー応答法を用いた。超臨界溶媒としてSF_6(328.2K、10-20MPa)、液相(303.2-333.2K、16.0MPa)溶媒にはシクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ドデカンを用い、各種有機化合物の相互拡散係数を測定した。 また、本測定による超臨界SF_6中と超臨界CO_2中のD_<12>の文献値を用いて各種推算式((1)溶媒自由体積による相関式、(2)本研究で新たに提案したSchmidt数による相関式、(3)Wilke-Chang式等のStokes-Einstein式に基づく各種実験式、(4)D_<12>/TAη^<-B>の経験式)の有効性を検討した。また、あわせて本年度測定の液体有機溶媒中のD_<12>データにもこれら推算式が適用できるか検討した。その結果Schmidt数による相関式が超臨界SF_6、CO_2中のD_<12>だけでなく、液相n-ヘキサン、n-ドデカン、シクロヘキサン中のD_<12>推算にも有効であることがわかった。 購入した備品のデジタルデータレコーダーはTaylor法によるトレーサー濃度応答の収録に、加圧リザーバーは溶媒送液用に用い、電子天秤はトレーサー溶質の秤量に用いた。
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