研究概要 |
本年度は平成4年度に製作した超臨界流体試料をin situにEXAFS測定するためのセルと試料輸送のための配管系を用いて,放射光を用いたX線吸収測定の実験を行なった.試料には臨界温度・圧力が67℃,39気圧であるCF_3Brを選んだ.試料を25ccのサンプルシリンダに飽和蒸気圧が15気圧の液体状態で保存し,X線吸収の測定前にセルを冷却してシリンダからセルに移送して液体状態にして密封し,これを徐々に昇温して気化させて室温より高い温度の液体状態と超臨界状態の試料の吸収の温度依存性を測定した.試料の温度はセルに埋め込んだカートリッジヒーターと,セルを包んだリボンヒーターによって制御するようにした.セルは2枚のBe窓板(1枚の厚さ3mm)の間隙を変えて,X線吸収測定に適した厚さにできるように作られている.試料を移送する前にKrガスを適当な圧力でセルに詰め,KrのK吸収を測定して,吸収端のジャンプから間隙の厚みを計算した.X線吸収測定は高エネルギー物理学研究所,放射光実験施設において,平成5年5月と10月の2回,47時間づつのビームタイムの配分を受けて,シンクロトロン放射を利用してBrのK吸収端(13,470 eV)の前後のエネルギーで行った.測定の結果,試料物質の密度の温度変化を反映した吸収ジャンプの変化が明瞭に観測された.また吸収スペクトルとそのフーリエ変換スペクトルの形状は,気体,液体,超臨界状態で変化することも分かった.これはBr原子のまわりの配位が状態によって異なっていることを示唆している.現在スペクトルをFEFFプログラムを用いて解析中である.
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