当該年度の研究目的としては、平成4年度に制作した高温衝撃試験機本体に、高精度の荷重-変位測定装置を付帯させ、衝撃破断時の荷重-変位曲線を求めて金属間化合物の高温における衝撃破断吸収エネルギーおよび動的破壊靭性値を測定することである。そのため、高い応答周波数を持ち、かつ、数値解析の可能なアナライジングレコーダーを購入した。この記録計を用いることで、より正確な破断吸収エネルギーおよび衝撃破断応力が求められ、これらの値から動的破壊靭性値を求めることが可能となった。また、変形速度の速い衝撃試験では、室温付近における環境脆化の寄与はほとんどなく、環境脆化割れ感受性の高い金属間化合物においてもその本来の(環境の影響を受けない)破壊靭性を評価することが可能となった。例えば、それぞれ室温および673K付近で顕著な環境脆化を示すCo_3TiとNi3(Sは、衝撃試験においては、いずれも延性を示した。このことは、環境脆化を抑制すれば、これらの合金は極めて延性的であることを明確に示している。一方、as-castTi_3Alは、衝撃試験においても顕著な脆化を示し、環境の影響を取り除いてもなお、脆性的であるといえる。この合金が脆性的であることの原因の1つに、この合金の持つ水素および酸素との高い活性度が上げられる。すなわち、この合金の製造過程に吸収される微量の水素および酸素が脆化を引き起こしているとも考えられる。特に、比較的高温で生ずる酸素脆化に関してはこの合金の高温側での脆化の要因となることも予想され、酸素の影響について詳細に調べることが肝要である。さらには、残留水素および酸素量を極力低下させた雰囲気内での合金溶製方法の確立が望まれる。
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