本年度はBi系超伝導酸化物として2212相及び2201相の研究を行った。(1)2212相については、(ア)Znのドーピング効果と(イ)異常ピーク効果の研究を行った。(ア)のZnドーピング効果の研究では、良質な単結晶を作った。Znをドープした単結晶は世界的にも初ではないかと思う。Znのない試料では抵抗遷移の裾に、弱い磁場を印加したときに新たな抵抗が現れること、そして、Znを入れると消えることを見いだした。(LT-20発表済。)ヘキサチックな磁束格子が出来ている可能性を指摘した。さらに、Znのドーピングと共に超伝導の異方性が大きく減少することを見いだした。異方性パラメータで言うと200-250のγ値が酸素アニールでは変化しないが、Znをわずか0.6%銅と置換するとγ値は50-70に減少した。(ISS'93発表済。)(イ)では、磁化の温度変化から磁化の磁場依存性を導出するという斬新な方法で研究を行い、異常ピークの二次高調波、及び1/3次の逓減波を初めて見いだした。このことは、異常ピークの原因にも大きく制限を与えるものであり、我々はマッチング効果、もしくはシンクロナス効果が原因と考えている。(論文準備中)(2)2201相については、LaをSrと置換することにより、基本的なキャリヤー数とTcの相関を調べることを単結晶で行った。その結果、28.7K(ゼロ抵抗温度)という、これまでの最高値を確認した。また、この最適試料について、超伝導の抵抗遷移を磁場で破壊する試みを行い、成功した。この試料は、抵抗の温度依存性が直線的であり、また、超伝導の揺動効果が大きく現れることから、Tcは低いけれど、典型的な高温超伝導体とみなすことが出来る。我々は超伝導のH-T空間に於ける相図の作成に成功した。(印刷中)
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