研究概要 |
高温超伝導体および関連酸化物について、高酸素圧から水素還元雰囲気までにわたる様々な雰囲気下での合成を行い、酸素量の制御と酸素量・構造・相関係・相転移および核磁気共鳴による微視的電子状態の解明を行った。結果、以下のような成果を得た。(1)La_2CuO_<4+δ>においては、基本的な相関係は、過剰酸素を高酸素圧により導入するか、電気化学的に導入するかで似ているが、前者の場合はあまり過剰酸素を導入できず、しかも、過剰酸素は相分離現象を示すのに対し、後者では、多量の過剰酸素を導入でき、その結果T_C=40KのFmmm相が生成し、また、相分離現象は見られない。(2)La_2NiO_<4+δ>については、水素還元雰囲気から高酸素圧雰囲気(300気圧)まで変化させることにより、0(〕 SY.ltoreq. 〔)δ(〕 SY.ltoreq. 〔)0.18の過剰酸素を含む試料を合成し、五つの相と四つの相転移および相分離現象を観察し、平衡状態図を確立した。これらは、高温超伝導体関連の構造・相転移や相挙動をすべて含んでいて、それらを理解する上でのモデル物質である。(3)La-Sr-Cu-O系においては、新物質(La,Sr)_5Cu_5O_<13>、(La,Sr)_4Cu_4O_<10>を見出すとともに、相関係を確立した。(4)TI_2Ba_2CuO_yについて、酸素同位体^<17>Oを含む化合物を合成し、核磁気共鳴実験により微視的電子状態を調べた。T_C=0Kのオーバー・ドープ状態のTl_2Ba_2CuO_yにおいては、CuO_2面のCuサイトと酸素サイトのナイトシフトの値は、T_C=85Kのものに比して大きく、オーバー・ドーピングによってナイトシフトのスピンパーツが増加していて、Cuサイトと酸素サイトの超微細相互作用係数が増加するためと考えられる。また、オーバー・ドープ状態でも、緩和時間T_1の異方性は存在し、反強磁性相関も弱いけれど残っている。
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